過去ログ - フィアンマ「オッレルスに性的な悪戯をしようと思う。安価が導くままに」
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418: ◆H0UG3c6kjA[saga]
2012/05/24(木) 17:49:09.54 ID:PeRpmYiZ0

産まれは何処だったのだろう、本来はシチリアの方だったような気もする。曖昧な記憶。
物心ついた頃には父親というものは俺様には既に居らず、母親は俺様に向かいひたすら『あなたのお父さんは神様なのよ』と言い聞かせていた。まぁ、実際そんな事があったら神話的事実になってしまうので、実際には娼婦として働いた際身ごもった子か、或いは俺様を産む前後に離婚したかのどちらかだろう。どちらにせよ、敬虔な十字教徒ではあった。
母親は生計を立てる為に娼婦として、或いは酒場で働いていた。毎日物を満足に食す事すらままならない、貧しい生活だった。
玩具を買う金等勿論無く、幼い頃はいつも一生懸命聖書を読んでいた。
聖書だけは教会に強請りさえすれば、小さな文庫本形のものを無料でくれたからだ。
聖書を読み、学校に行く金の無い俺様はよく教会へ通っていた。
先程と同じく、強請りさえすれば、無償で勉強をすることができたからだ。
イタリア語。英語。フランス語。ヘブライ語。ラテン語。日本語。
聖書を読みつつ教会で勉強をする内、神は本当に居るのだと思った。
その頃の俺様は孤独に弱く、自分の父親は神なのだと本当に思っていた。
自分の母は処女懐胎したのであって、自分は神の子であるのだと。
そんな折、母親が男に入れ込むようになった。
今までも随分と貧しかった食卓が更に貧相になり、母親は俺様をあまり大事にしないようになった。一人息子だというのに、男の方が大事なようだった。
家に居辛さを感じつつも何とか毎日を耐えていたが、八歳の時、母親に初めて八つ当たりで頬をぶたれた。件の男にフラれでもしたのか、質の悪い酒を何度も何度も煽り、酔って焦点の合わない瞳で俺様の姿を虚ろに捉えながら、何度も横っ面をはたき、床に倒れる体を蹴った。
口の中が切れ、血反吐を吐きながら追い出されるまま行く宛も無かった俺様は近くの教会へと逃げた。

どうしてこんな事になってしまったのでしょう。
俺も母さんも、あなたの敬虔なる召使だったはずです。
どうか俺を、そして出来うるならば一番に母さんをお助けください。お救いください。
これから先の人生全てを、神のために捧げます。
どうか、あの頃の安寧を取り戻させてください。
今よりもっと貧しくなったとして、それでも構いません。
どうかお救いください。今一度、哀れな子羊に祝福をいただけませんでしょうか。

問いかけても問いかけても神は何も応えてくれず、マリア様は癒してくれなかった。
信仰したところでこんなものか、と思った。と同時に、俺様はきっと自分で思っている程不幸ではないのだろうと。そう、思い込んだ。



しばらく教会で過ごしてから家に帰ると、警察が何かを調べていた。
高いアルコールの酒が(割れた酒瓶があったらしい、手でも滑って落としたのだろうか)床にバラまかれた上、家主(俺様の母親)がタバコを吸い、適当に放り投げて引火、家ごと一気に燃えてしまい、家主は酒に酔っていた為逃げる事もままならず死に絶えたと。
嗚呼、神はまだ俺様に言葉を授けてはくれない。
清く生きている筈の俺様に何も教えてくれない。
だから俺様は、今自分が思っている程不幸なんかじゃない。
『“奇跡的”に火災から逃れ、教会で神にお祈りしていたが故生き延びた少年』
事実がいかなるものであれ、世間は俺様の事をそう見るのだろう。
可哀想に。
それにしても幸運だった、良かった、と。




身寄りを完全に無くした俺様は教会に引き取られた。
よく祈りや勉強をしに行っていたあの教会だ。
シスターは優しく、神父は穏やかに強かで、元々教会で暮らしていた子供たちものんびり屋が多く、俺様が生きていくにあたって苦痛はまったくなかった。
有り体に言えば、その教会の人々が好きだったのだろうと思う。その時が、子供時代で一番幸せだった。
母親の事を時々思い出して落ち込みはしたものの、俺様は信仰心を取り戻し、自分は神の子なのだと、だからこそ不遇なのだと理解しようとした。
そう理解しなければ、自分が傷つく羽目になる、それ故に。
人はパンによってのみ生きているのではない。神が発する一つ一つの言葉にも拠る。
だからパンすら手に入らなくても(辛い目に遭っても)、神様を信じていれさえすればいつかは救われるのだと、そう思っていた。


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