12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/11(金) 21:50:49.23 ID:gd3Ez0Xw0
「着いたよぉー!」
ゆさゆさと身を揺さぶられながら、僕はいささか乱暴に起こされた。どうやら町に着いたようである。
「ここはねー! 私が今、拠点としているモーリィス・ヴィルって言う街だよ! 交易が盛んで、お城も近くあるから商業的に重要な地とされてるのー!」
「へぇー……商業ねぇ……あっ、そういえば君は何してる人なの? ってか、君の名前も聞いてなかったね……」
僕は今更ながらに大事なことを訊ねてみる。彼女は頭をポリポリと掻きながらも笑い、美しい笑みを浮かべて僕の方を見た。
「ふっふー、今更だねぇ! まぁいいでしょう! 私の名前はユノゥ! しがない魔法騎士なのであります!」
「魔法騎士?」
聞き慣れない言葉に(もちろん記憶がないためにほとんどの言葉が新鮮に聞こえるのだが)僕は首を傾げた。
「うん! って言ってもギルドに入ってるわけじゃないし、勝手に悪いモンスター倒して、で賞金稼ぎしてるだけだけどねぇ―! ソロ活動中なのだぁー!」
そうして、またやけに元気のいい声で彼女は楽しそうに笑った。この短い間の彼女しか知らないが、彼女はいつでも楽しそうに人生を生きている。それは何も覚えていない僕対しても、何かしらの元気を与えてくれるような、とても温かい生命に満ち溢れていた。
「つーことで、まぁ君はとりあえず私が今いる宿に来たらいいよ。行くところないんでしょ?」
「え……いや、あの……そんなことまでしてもらうのは悪いよ」
「悪いも何も、困っている人を朴っておく方が悪いわよ! いいから四の五の言わずに私に助けられなさい! アルパカ君!」
「あ……アルパカ君?」
「ほらほらぁ、こっちこっち! お菓子もあるよー!」
「うわぁ……ッ! ちょっ、引っ張らないでよー!」
こうして僕は彼女の勢いに引っ張られるようにして、彼女に面倒を見てもらうことになったのである。
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