過去ログ - 安価に沿って小説を書いていく。
1- 20
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/11(金) 22:46:02.74 ID:gd3Ez0Xw0
ユノゥに連れられて、僕は町はずれにあるあまり大きくはない宿へ入った。特に目立つ看板を掲げているわけでもなく、木の板に「ジュビリィ」と手書きで書かれたものが二階の窓下に掲げられているだけだった。それでも素朴で優しい雰囲気は伝わってきて、僕は一目見ただけどこの宿のことが少しだけ好きになった。

「ここね、店主さんもいい人だし、何より安いんだー! 私って貧乏だし」

「うん、でも、本当に良さそうな宿だね」

貧乏なのに僕なんか拾ってきていいのだろうか。申し訳ないと言う気持ちが奥底から溢れ出してきて、ユノゥに向かって素直にそう告げたら、そんなの何も気にしなくていいんだぞっ! と言う風にウインクされて僕はこれ以上ネガティブなことを言うのを控えようと思った。

そんなやり取りがありつつ、僕たちが宿に入ると、来訪を待っていたかのように愛想の良さそうな女店主が駆け寄ってきてくれた。彼女が背が高く、凛々しい顔つきに、どこか人を和ませるような表情を持ったそんな女の人だった。

「おっと、男でも引っかけてきたのかい? ユノゥちゃん」

「うん! 寝てたから拾ってきた!」

引っかけたという言い方もどうかと思うが、ユノゥも人を捨て犬みたいに言わないでほしい。
そもそも男が寝てたから拾ってくるのもどうかと思う。
しかし、そう思いながらも実際に僕は捨て犬ようなものであるし、彼女に助けてもらったのは事実なのだから、口を挟むことは躊躇われた。

「へぇー、ユノゥちゃんは男嫌いかと思ってたのに……草食系が好きなのかい?」

「アルカパっぽいからねー」

本当に、一度鏡で見てみたい。そんなにも言うのならば、僕の顔はアルパカタイプで間違いないのだろうけれど。それでも、思い出せない自分の顔がアルパカだというのは、なんだかとても残念に思う。せめて可愛い系であっても兎とかが良かったな。いや、兎は出っ歯だからやっぱり嫌だ。
そんなことを考えていると、ユノゥが声をかけてくる。

「ほらって、部屋に行こうっ! 草はないけど、缶詰ならあるよ!」

「別に僕の顔がアルパカみたいだからって草は食べないよ。いや、もしかしたら記憶をなくす前は食べていたかもしれないから何とも言えないけれど」

「もぉー! 冗談だよー!」

バシバシと僕の肩を叩きながら、彼女は僕の手を引き、共に宿屋の二階へ上がる。そして手前から三番目の扉を、腰に着けていた鍵で事もなげに開けて僕を案内した。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
17Res/13.37 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice