6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2012/05/13(日) 23:08:15.07 ID:rbrt1Q4+o
というわけで、そのときもわたしはおねえさんの言うひとつひとつの冗談に笑ったり驚いたりしていた。
変に曲がりくねった道(それはその頃新たに付け足された道だったから古い家にあわせていびつな形をしていた)を歩いているときのことだった。
不意におねえさんがわたしに尋ねた。
「ねえ、唯ちゃんは自分の将来が見える?」
その質問があまりに唐突だったのと、隣家のカレーの匂いに心を貸し出してしまっていたので、わたしはいとも簡単に8年間のちょっとした脆い秘密をさらけ出してしまった。
どかーん!(こういう安い表現はあまり使わないほうがいいと澪ちゃんが後で教えてくれた。澪ちゃんが教えてくれたのはこれともう一つ、えくすくらめーしょん・まーくはひとつまでだということだ。!!なんて言語道断。お話が薄くなるだけだ、と)
おねえさんは驚いた顔で、唯ちゃんが読書好きだとは知らなかったな、と言った。わたしもそれは知らなかったと言い二人で笑った。
それからおねえさんはわたしに書いたものを読ませてくれないかしら、と尋ねた。わたしは断った。
それはこういうことだった。
自分の天国――憂の褒め言葉やお母さんが頭を撫でてくれるあの感じの外側に自分の世界を放り投げだす勇気がわたしにはなかったのだ。
自分の書いたものが中学生の平均的なそれから言っても稚拙なものだということを、なにかあるたびわたしはひしひしと認識しなければならなかった。
それでも、わたしは自分の個人的なお話が好きだったし、自信もあった。でも、それに何の意味があるだろう。
棒つき飴で戦闘機に向かっていける?
同情はひけるかも。
それで、あっさりと夢を諦めた。
あーあ。
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