過去ログ - 許嫁「末永く宜しくお願い致します!」その5
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286: ◆vF1GrLS8msUg[saga]
2012/06/28(木) 21:21:56.82 ID:wgpeFjNAO

男くんの写真が10枚を超える頃、私は自分の思いを抑えきれなくなっていた。

枚数を重ねるごとに、ほんのわずかづつ男らしくなっていく男くん。
この時にはすでに私自身、自分の心にあるのが姉弟への思慕ではなく、男女の情だと気付き始めていた。

まだ10才の、初恋。
男くんに会いたい。
会って、昔のような笑顔を見たい。
枚数を重ねても変わらず無表情な男くんの写真を見て、胸が締め付けられるようだった。

その日、お父様が私の様子を見に来た時に、私の胸の内に溜まっていたものが噴出した。


 『お父様! 男くんに会いたい! お願いです、会わせて下さい!』


目から溢れるものを抑えることも出来ず、泣きながらお父様に訴えかけた。

でも、その後私は後悔した。
なぜなら、初めて私はお父様の涙を見てしまったから。


 『すまぬ……まだ。 まだ会わせてやれないのじゃ……』


理由も言わず、ただそう呟くと目の端に浮かんだ涙を拭い、お父様は私の頭を撫でた。

今なら分かる。
きっと、お父様は私に男くんの姿を写し見ていたのだろう。
そして、私に対して申し訳ないという気持ちで一杯だったのだろう。

ただ、この時の私はまだ幼くて。
だから、男くんに会おうとする事はいけない事なんだと自分に言い聞かせて。

そのせいで、男くんへの想いは余計に募っていく事になるのだけれど。

この日から、私は男くんに会いたいと言わなくなった。




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