過去ログ - 律「うぉっちめん!」
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150:律「うぉっちめん!」[sage saga]
2012/08/13(月) 21:20:14.55 ID:Jqrd5xdh0
 
梓「そ、そんな……」

律「バッジ欲しさのチンピラがせっかく一仕事終えたってのに、自殺するワケが無いだろ。
  しかも、監視の眼が光ってる留置所でどうやって首を吊るってんだよ。くそっ、また
  消されちまった……」

梓「……」

梓はガックリと肩を落とし、ハンドルに突っ伏してしまった。
唯一残された手がかりを失った挫折感だけではない。
律の推理は正しかった。
紬襲撃犯(自称唯殺害犯)が不自然な死を遂げた事によって、今回の一連の事件に関わった
人間は必ず抹消されるという事実が証明された。
そして、自分が追っているのは、そんな恐ろしい事実をいとも簡単に実行してのける巨大な
力を有した存在なのだ。
嫌でも信じるより他は無い。
無力感を伴った圧倒的恐怖が、梓の心を支配しようとしていた。

梓「もう…… ダメかも……」

律「まだだ。まだ他に方法はある」

梓「どんな方法ですか……」

律「死んだチンピラはチンピラに過ぎない。五藤組の中でそれなりの力を持った野郎がムギの
  暗殺を命じたんだろう。そいつはたぶん、真犯人に暗殺を依頼された野郎でもあるんだ」

梓「それで……?」

律「五藤組の事務所に行く」

梓「そう言うと思ってました…… でも、暴力団の事務所に乗り込むなんて、殺される為に
  行くようなものじゃないですか。それに、真犯人は暴力団を操れる上に、警察内部にも
  協力者を持っています。一般市民の私達が敵う相手じゃありません。もう、ダメです……
  諦めましょう……」

律「殺される、か……」

溜息を吐いた律は、ロールシャッハ模様のニット帽を被り直し、トレンチコートの胸ポケットに
差したサングラスをかける。
梓の方は向かず、黒いレンズ越しにフロントガラスの向こうを見据えながら、静かに話し出した。

律「いいか、梓。何も行動しないってのは、私にとって死んだも同然なんだよ。ここで妥協して、
  唯の事を諦めてしまったら、その瞬間に私はただ生きているってだけの、血と糞が詰まった
  皮袋になり下がるんだ」

梓「……」

律「私はもう死ぬ事は怖くない。でも、梓、お前は別だ。お前が自分の人生を大切にしたいと
  思うのなら、やっぱり私達はここで別れた方がいい。私一人でやる方がいいんだ。たとえ
  そうしたところで誰もお前を責めやしないよ」

梓「……」

思いの外、優しい口調の律。
ハンドルに突っ伏したままの梓。
沈黙の中、エンジン音だけが響いている。
車が再び発進する気配も、ドアが開く気配も、感じられない。



コトブキ・エンターテインメント本社ビルの社長室。
紬は年代物のアンティークデスクの上に置かれた書類に眼を通しながら、受話器を片手に
何やら指示を出している様子であった。

紬「ロッキード・マーティン、ボーイング、BAEシステムズ、EADSの株を買い。それと
  大成建設、鹿島建設、清水建設、大林組、竹中工務店も買いよ。あとは、旅行関連の
  企業はすべて売りで。いいわね」

欧米の軍需企業と日本五大ゼネコンの名が発せられた時、紬の表情は近しい者が見た事も
無いような険しく厳しいものとなっていた。
やがて、紬は固い表情で受話器を置くと、額に手を当てて大きく息を吐いた。
眉根はきつく寄せられ、眼は閉じられている。
五分経っても眼は開けられない。十分経っても同様だ。そのまま眠ってしまったのだろうか。
それ程の長い時間が経過した後、不意に内線電話のコールが鳴り響いた。
社長室長の斎藤菫からだ。
紬はすぐに眼を開け、ワンコールで受話器を取った。

紬「何?」


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