20:律「うぉっちめん!」[sage saga]
2012/05/21(月) 22:37:04.19 ID:Bk4utWlu0
律「目の上のタンコブがくたばってくれた安心感か? 憧れの存在を失った喪失感か?
両方ってのも有りだぜ」
澪の顔が紅潮し、奥歯がギリギリと噛み鳴らされた。拳は強く握り締められ、今にも律に
殴り掛からんばかりである。
しかし、その手は律には飛ばず、内線電話に延ばされた。
澪「警備ですか? 不審者が私の控え室にいるんです。大至急、来て下さい」
律「ハハッ、不審者か。否定しづらいな。……唯の告別式は必ず来いよ。じゃないと、せっかく
被った慈善家の仮面が剥がされちまうぜ? なあ、ミス・ボノ」
澪「うるさい! 帰れって言ってるだろ!!」
罵声の先に律はもうおらず、控え室のドアがあるだけ。
澪の眼は涙に潤み、興奮で息が上がっている。律に言われた言葉が胸に深く突き刺さっていた。
澪「ああああああああああ!!」
絶叫と共にテーブルを引っくり返し、コーヒーメーカーを床に叩きつけ、椅子を壁に投げつける。
その激しい物音を聞いた警備員達は慌てて駆けつけた。不審者がいるとの連絡があった状況で、
平沢唯殺人事件が起きたばかりという事もあり、警備員は生きた心地がしなかった。
見ると、嵐が過ぎていったと形容したくなる控え室の中で、澪が肩で息をしている。
マスカラは涙で溶け、黒い涙となって頬を濡らしていた。
開演まであと15分しかないというのに。
『日誌 田井中律、記 2022年10月13日23時58分
火曜日の夜、東京で平沢唯が死んだ。
泣く者もいる。憤慨する者もいる。冷静に受け止める者もいる。面白がる者もいる。無関心な
者もいる。
だが、追求しようとする者は私だけだ。私以外には誰もいない。
私は間違っているのだろうか。
この地球上で死んでいく人間は無数にいる。戦争、犯罪、貧困、病気。世界は死の原因に
事欠かない。
たった一人の女の死に何か意味があるのか?
あるとも。
平沢唯が殺されたからだ。
唯を殺したクソ野郎は今夜ものうのうと夕食にドリンクを付けている。
探し出して、罰せねばならない。真実を暴き、報いを受けさせなければならない。
その為ならば、例え世界が滅びる事になろうとも、絶対に妥協しない。絶対に』
どんな気持ちだい?
なあ、どんな気持ちなんだい?
たった一人
帰る家も無い
誰にも相手にされず
転がる石のように
――ボブ・ディラン
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