過去ログ - 律「うぉっちめん!」
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33:律「うぉっちめん!」[sage saga]
2012/05/22(火) 23:28:37.42 ID:hxj4NxIg0
第二章《死の証明》

そぼ降る小雨は一向に止む気配が無かった。
広い斎場は多数の列席者で溢れ、ムッとする人いきれが10月の肌寒さを忘れさせる程だ。
平沢唯の告別式。
そこには本当に大勢の人間が集まった。
澪、紬、梓の放課後ティータイム元メンバー、唯の所属事務所関係者、生前親しかった多くの芸能人。
業界人ばかりではない。高校時代の担任である山中さわ子、幼馴染の真鍋和を始めとした
学生時代のクラスメイト等、一人の人間としての唯と繋がりを持っていた人々も多い。
また、会場の外には数百人のファンがおり、時折涙声で唯の名を絶叫している。
皆が唯の死を悲しみ、嘆き、悼んでいた。

紬「もうすぐ出棺ね。これで本当にお別れなんて……」

澪「それにしても律の奴、人に『必ず来い』なんて言っておいて、自分は来てないじゃないか。
  まったく」

梓「澪先輩のとこにも来たんですか? 律先輩」

澪「うん。おかしなカッコでおかしな事を言って帰っていったよ。ああ、思い出すだけで、
  もう……!」

紬「私のところにもね。唯ちゃんはストーカーに殺されたわけじゃない、って」

梓「そうですか…… あ、あの、お二人は見ましたか? 律先輩の、あの眼……」

澪「眼? いや、見てないな。サングラス掛けてたし」

紬「私も見てないわ。りっちゃんの眼がどうかしたの?」

梓「いえ、別に……」

紬「じゃあ、そろそろ行きましょう。出棺の時間よ。澪ちゃんもね。色々、思うところは
  あるかもしれないけど……」

澪「棺は持たせてもらうよ。あんな奴でも友達だったからな」

梓(あんな奴? だった? よくもそんな……)



出棺前に行われる筈だった最後の対面は、遺体の頭部の損傷が激しい為、省略された。
棺は親戚の男性四名に、澪、紬、梓、和の四名を加えた、計八名で運ばれた。
その後ろには位牌を持った唯の父と、遺影を持った妹の平沢憂が続く。
憂の憔悴ぶりは、それだけでも周囲の涙を誘う程に痛々しいものだった。
充血とくまが目立つ眼と真っ青な顔色。視線は虚ろで定まらず、口は僅かに開いている。
“幽鬼のような”という表現も決して大袈裟ではない。
両親の言葉にも、親友である梓の言葉にも、幼馴染である和の言葉にも、一切反応しない。
ただ、時折、消え入りそうなか細い声で「お姉ちゃん」と呟くだけ。

そして。
秋山澪、琴吹紬、中野梓。
棺を支える彼女ら三人の脳裏には、唯と共に過ごした日々の思い出が去来していた。



紬が振り返っていたのは、放課後ティータイムのメジャーデビュー記念パーティ。
あれは2011年4月11日。

全員『せーの…… Happy Major Debut!!』

唯『いぇーい! あはははははは!』

社長『いやあ、五人共、本当におめでとう。本日発売のシングル『Cagayake! GIRLS』を
   以って放課後ティータイムのデビューとなる訳だが、君達は日本一のバンドになると
   私は確信しているよ。これからが楽しみだ』

唯澪律紬梓『ありがとうございます!』

社長『いやいや、今日は堅苦しい事は抜きにして大いに盛り上がってくれたまえ。それじゃ、
   私は次の予定があるからこの辺で……』

唯『じゃあねー、社長ー』

澪『こら、唯! お前、社長に向かって……!』

マネージャー『まあまあ、澪ちゃん。唯ちゃんのキャラクターは社長も理解してるから』

さわ子『それにしても、あなた達がプロになっちゃうなんてねー。高校時代を思い返すと、
    感慨深いものがあるわ』


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