過去ログ - 律「うぉっちめん!」
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56:律「うぉっちめん!」[sage saga]
2012/05/28(月) 14:50:08.83 ID:yc3eS1Xy0
 
憂「そんな…… わ、わかりません。一緒に住んでいる訳じゃないですから。昔と違って、
  あまり話をしてくれなくなりましたし。けれど、私から見る分には、そういう感じは
  ありませんでした」

律「ふうむ……」

憂「あとは、週に一度か二度、どこかへ出かけていたくらいです。行き先は絶対に教えて
  くれませんでしたけど……」

律「怪しいな」

憂「でも、そんな時は外泊せずに、ちゃんと部屋に帰って来てました。少なくとも私が知ってる
  限りでは。それに、ひどく酔って帰って来るんですけど、いつもと違って少し楽しそうでした」

律「そうか……」

空振り。ワンストライク。
審判の声が聞こえてくるようだった。
唯に一番近しい人間からの聞き込みで、この結果。
ハイウェイの照明が暗くなり、またも道の先が見えなくなりつつある。
どうしたら良いのか。
他の手掛かりも、手掛かりというには心もとないものだ。
律の頭蓋の中では、思考の渦が激しさを増していたが、顔貌は相変わらずの無表情である。
黙りこくってしまった律に対し、憂はおずおずと言葉を掛ける。

憂「あ、あの、律さん…… もし、お姉ちゃんを殺した人がストーカーじゃないとしたら、
  どんな人だと思いますか……?」

律「ん? ……まだ、わからない。残された手掛かりも、唯が置かれていた状況も、はっきり
  しない事が多いから」

憂「そうなんですか……」

律「ただ、さ…… 唯は誰かに恨みを買うような奴じゃない。だから、犯人は完全に自分の都合で、
  唯に生きててもらっちゃ困る野郎だと思う。何となくだけど」

憂「そんな人がいるんでしょうか……」

律「いるんじゃないか? 芸能界はおっかないところだからな」

憂「……」

またも沈黙の時。
常に思案を巡らせ続けている律はそれでもいいかもしれないが、憂はそろそろこの場が苦痛に
なりつつある。
帰宅したい旨を伝えるタイミングを図っているうちに、憂の視線は律が被っている白地に
黒模様のニット帽に注がれた。

憂「その帽子……」

律「帽子がどうかしたか? 部屋にあったもんを適当に被っただけだよ」

憂「ロールシャッハ・テストのカードみたいですね」

律「何だって?」

憂「ロールシャッハ・テストですよ。私、お姉ちゃんが心の調子を悪くしてから、精神医学や
  心理学の本を買って勉強してて…… その中に載っていた性格検査のひとつで、インクの染み
  みたいな模様を見せて、それが何に見えるかによって人格を分析するテストなんです」

律「ふうん……」

憂「例えば、こんな感じで――」

冷えて硬くなってしまったポテトの脇にあるトマトケチャップ。憂はそれを取ると、紙ナプキンの
上に数滴、無造作に垂らした。
そして、その紙ナプキンを二つに折り曲げ、また開く。
すると、そこには赤い、左右対称の、奇妙な模様が展開されていた。

憂「――これ、何に見えますか?」

紙ナプキンが開かれた瞬間から、律には鮮明に見えていた。
頭が割れて脳がはみ出し、血と脳漿に塗れた唯の顔が。
唯がジッとこちらを見ている。眼を離す事が出来ない。

律「……キレイなチョウチョ」


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