過去ログ - 律「うぉっちめん!」
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93:律「うぉっちめん!」[sage saga]
2012/07/02(月) 22:47:49.12 ID:LPqSPWEC0

すごい。完璧だ。
顔色ひとつ変えず口を回している。どこで息継ぎをしているか、私にもわからないくらい。
楽しそうに、活き活きと、この難曲を歌いこなしている。
唯は私への慰めや自己暗示なんかじゃなく、本気で放課後ティータイムの自分なら歌えると
言っていたんだ。

唯『誰ももってるハートって言う名の小宇宙♪
  ギュッと詰まっているよ喜怒哀楽や愛♪
  シュンてなったり ワクワクしたりbusy♪
  カオス満載な日々歌にしちゃおう ぶちまけ合っちゃおう♪
  授業中も無意識に 研究する musicianship♪
  エアでOK雰囲気大事 不意に刻むリズム♪
  通じ合っちゃう ビート マインド 自由にエンジョイ♪
  楽しんだもんが勝ち!♪』

高音も出しきっている。唯がここまで高い声を出せるなんて。
もしかして、ムギは最初から確信していたのだろうか。唯がここまで完璧に歌えると。
私はムギに信頼されているだろうか。今の唯みたいに。
私は唯みたいに歌えるだろうか。こんな完璧に。
これが才能なのか。これが才能の差なのか。私と唯の。
唯は音楽の神に愛されている。神の賜物だ。センスもテクニックもカリスマも。
私は唯に魅せられるだけ? 私は唯を羨むだけ?
私は……

唯『ごめん 譲れない 譲らない♪
  縦・横・斜め swinging around♪
  好きな音 出してるだけだよ girls go maniac♪
  あんなグルーヴ こんなリバーヴ♪
  試していきたいんだ ずっとずっと♪
  息合わせてね♪
  chance chance 明日を break break 夢見て♪
  faith faith 強気で shake shake 盛り上がろう♪
  浴びたら忘れらんないっしょ 喝采!♪』



2016年8月14日。私と律と梓はステージの上にいる。放課後ティータイム6thアルバムツアー、
札幌ドーム2DAYSの二日目だ。
開演から二時間近くが経ち、コンサートは佳境を迎え、盛り上がりは最高潮に達している。
私達三人の声、一挙手一投足すべてに観客が反応し、歓声を上げる。

澪『じゃあ、最後の曲です』チラリ

私は左側にいる梓の方を見遣り、次に後ろに展開されているオーケストラに眼を向ける。
アイコンタクトの後、梓のアコースティックギターがスローに掻き鳴らされた。
やがて、ギターにストリングスの音色が重ねられる。いいぞ、完璧だ。
そして、律のドラムが…… お、おい、ちょっと待て。早いって。入るのが早いよ、律。
私が律の方を向いて大きく首を振っているのに、彼女は気づかない。

澪『ストップ、ストップ! ちょっと止めろ!』

律も梓もオーケストラも怪訝な表情で演奏を止める。
客席はざわめき半分、歓声半分。

澪『律、入るのが早い!』

律『はあ!? それくらいフォローしてくれてもいいだろ!』

澪『お前がそれだと後からおかしくなってくるんだよ! 何年ドラムやってんだ!』

律『うるせえ! 死ね!』

澪『なっ……! お前が死ね!』

観客『フゥウウウウウ!』パチパチパチパチ

観客『イェエエエエエエエエ!』パチパチパチパチ

突然ステージ上で始まった私と律のケンカに、何故か観客は大盛り上がりだ。
最近では番組や雑誌インタビューで公然と言い争う姿を幾度と無く見せ続けてきた。
そのせいでファンも名物姉妹ケンカという感覚に陥っているのだろう。
少なくとも二人は本気で罵り合っているのだが。

澪『……』チラリ

私は再度、梓に視線を送る。
梓がアコースティックギターを、オーケストラがストリングスを弾き始め、先程の流れが
再現される。
しかし、またもやおかしい。今度は律のドラムが一切聴こえて来ない。


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