86:62 ◆6sOGwos0tc[saga]
2012/05/31(木) 19:58:56.18 ID:H/SWMSSm0
―月―
「『山ほどアイマスSSを見て来たが、俺達が月に来たのは初めてじゃないのか……?』」
「『めたな会話ですね。あなた様、機材の調子はどうですか?』」
宇宙服越しに通信機で問題ないと言い返して、俺と貴音は月の上を歩いた。偉大な月の上に、俺ごときの足跡など
つけて良いのだろうか。俺達はしばしの間、月面着陸を楽しんだ。
「『しかしこんなゴツイ宇宙服を着ていると、月を踏みしめた感触も感慨もないな。あのトレーニングや研修と比べれば
楽しいが……』」
「『う…ううぅ……』」
俺が月をピョンピョン飛び跳ねていると、突然貴音が泣き出した。どうしたっ!?何か問題でも起きたかっ!?
「『違うのですよあなた様……わたくしは嬉しいのです。ずっと憧れていて、地球上で眺めていた月の上に今こうして
立っているなんて、まだ夢のようで……。見てくださいあなた様、地球があんなに青く美しく見えます……』」
貴音が指を指した先には、我らが母の星が上半分だけぼんやりと浮かび上がっていた。“地球は青かった”確か
ガガーリンだっけか。こんな当たり前の言葉でも、月で見るとまた感じるものが違うなあ。
「『わたくしの生涯をかけての望みは達成されました。今この瞬間に、ここで死んでも悔いはありません』」
「『おいおいそれは困るな。俺達には全員でトップアイドルになる夢があるだろう。無理矢理引っ張ってでも、お前には
地球に帰ってもらうぞ』」
「『ふふ、冗談です。あなた様はいけずですね。まだもう少し時間があります。もう少しこの一時を楽しみましょう』」
そう言って月の上を跳ねる貴音。あまり遠くに行くなよ。近い将来、こうして一般人でも月に行ける日も来るだろう。
それまでしっかり貯金しておけよ。そしたら好きな相手と新婚旅行でまた来れるかもしれないぞ。
「『そうですね。その時はまたよろしくお願いしますね。あなた様』」
ん?どういう事だ?聞き返した俺に貴音は答える事無く、鼻歌を歌いながら月の散歩を楽しんでいた。
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