720:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/28(木) 12:46:11.07 ID:AasgcWJTo
「アドレス、変えてなかったんだね」
甘ったるい、鼻にかかったような声が、電話越しに聞こえた。
俺はなんだか奇妙な錯覚に陥る。アキがいる、と思った。この電話の向こうに。
「ああ」
頷くと、彼女はくすぐったいように笑った。奇妙に安らいだ声だ。
アドレスを変えていなかったことに、たいした意味はない。
もし彼女がしつこく連絡をとろうとしたなら、すぐにでも変えていただろう。
でも、そうはなかなかった。彼女は意外なほどすぐに事実を受け入れて、俺に対してどのような接触も試みなかった。
だから、変える理由がなかった。そうでなければ、疎遠になっていた幼馴染から、俺の携帯にメールが届くわけもない。
「いま、何してた?」
本題に入る前に、軽い世間話でもするつもりなのだろうか。いやそもそも、『本題』などあるのだろうか?
彼女はそういう人間だった。特に理由もなく、人を混乱させるのが好きだった。人を困らせるのが好きだった。
……あるいは、それは俺に対してだけだったか。
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