850:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:04:28.35 ID:5zJPOgVlo
泣き疲れたような声だった。彼女の目に涙は浮かんでいなかったし、表情は眠たげなだけで、寂しそうにも見えない。
それでも彼女は泣いていたのかもしれない。あるいは俺の自意識過剰なのかもしれない。
俺はこいつの考えていることが分からない。ずっと前からなにひとつ。
いつだって想像するのが怖かったから、分からないように、考えないようにしていたという方が近いかもしれない。
「わたしは」
と幼馴染は言う。
「別にあの子の言うことを信じてたわけじゃないですよ。きみがあんなこと言うはずないって思ってた」
本当のところ、俺は彼女の気持ちなんて知りたくないのだ。
それをはっきりさせてしまったら、俺は彼女と一緒にいることができなくなるかもしれない。
だって俺は、たしかにアキの言う通り、彼女を好きじゃないのだ。
好きだけど、それは特別な好きではないのだ。
俺の気持ちはいつだってある方向に傾いて引き離せない。
強力な磁力で引っ張られている。逃れようがないのだ。いつからかそうなったのか、思い出せないけれど。
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