851:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:04:54.77 ID:5zJPOgVlo
「だからあの子の言ってることが嘘だなんて知ってる。でも、きみの気持ちまでは分からないから」
彼女の声は曇天の下の神社に透明に溶けていった。何もかもを透き通ってしまいそうな声だった。
「怖くなったんです。本当にわたしを嫌いになっても、きみはそう言わないだろうって思ったから」
怖い、と俺は思った。何を怖がっているのかはわからない。
でもたしかにそうなのだ。続きを聞くのが怖かった。
「だから不安で、話しかけられなかったんです、ずっと。それでも諦めきれなくて、話せなくてもせめて近くにはいようって」
不意に、空気が変わるのを感じた。俺の怖さは消えていく。かわりに透明だった彼女の声に、しずかに色がつきはじめた。
俺はここに来るべきじゃなかったのだと思った。彼女を追いかけるべきではなかったのだと。
「同じ高校に入って、あたりをうろちょろして、遠巻きに眺めながら、それでも話しかけられなくて」
そして俺は、自分がこの期に及んで自分のことしか考えていないことに気付かざるを得なかった。
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