212:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2012/06/02(土) 23:12:15.57 ID:731ytAWDO
勇者「何か困った事があったら向こうの大通りに交番があるから……、それじゃオレは急いでるんで」
機姫「うむ、色々とすまん」
勇者「……」
勇者は立て掛けられた鋼の塊を、背中を曲げてくぐり抜け、機姫をその場に置いて再び走り始めた。
勇者「ふう……やっべー、もう授業前には間に合わないなー」
裏道を走りながらワザとらしく声に出す。
勇者「あー、やっべーなー、狐先生から鬼火食らっちゃうなー」
前方。左右の壁が途切れ、表通りが見え始める。
しかし勇者はそこでゆっくりと、駆ける足を止めた。
勇者「……あぁ、もうっ!」
反転、いま来た道を走って引き返す。
そしてしばらく裏道を戻って行くと、いまだに地面に腰を下ろし、しかし体育座りに変わっている機姫の姿が勇者の目に入って来た。
勇者「おーい」
勇者は足を止め、機姫に声をかけた。
機姫「ん? 忘れ物か?」
勇者「……あのさ、なんつーか、どうかしたか?」
機姫「どういう意味じゃ?」
勇者「お前、なにか困ってるんだろ? 裏道でさ、たそがれた感じに体育座りとかさ。
何か出来るとも分からないけど、オレでも話くらいは聞けるぞ」
機姫「ほう、ワシを心配してくれているのか?」
勇者「……ああ、そうだな。迷惑か?」
機姫「いや、迷惑とは思っておらん。しかし、おぬしは良い奴じゃな?」
勇者「……そうでもねーよ」
機姫「照れるな照れるな」
勇者「照れてない!」
茶化されて声を荒げる勇者を見て、機姫は楽しそうに頬を吊り上げると、イタズラっ子のような笑みを顔に浮かべたままくっくっと肩を揺らした。
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