20: ◆NbVYo5G9JI[saga]
2012/06/01(金) 22:27:25.85 ID:f4sf9lF8o
一人と一匹は少女の後を追って夜の街を駆け抜けた。
彼女の事だ、そう遠くは行ってはいないだろうが……プロデューサーはデジャブを感じた。
「響が事務所から叫んで出て行った時と一緒だ」――と。
当ても無い一人と一匹はイヌ美を連れてくれば良かったと後悔しながらも取り敢えず我那覇響宅へと向かう事にした。
歩いて行くにはプロデューサーのちんけな体力じゃ数時間掛かってしまう為、やむを得ずタクシーに乗って向かう。昔の彼ならお金が勿体ないの一言で走って向かったのだろうが、今の彼はそれなりに余裕があるのが救いだった。
しかし余裕が増えたからこそ、今回の件を招いてしまったのではないだろうか。そう心の内で思いつつ、彼女が自宅にいる事を信じてただひたすら到着を待つのみだった。
P「響っ!!」
プロデューサーはタクシーの支払いを終え、急いで玄関へと向かい、受け取っていた合鍵を使って部屋に入る。
そしてそこには静寂に包まれた部屋の中で一人ベッドに蹲る弱弱しい我那覇響の姿があった。その顔は涙で濡れ、瞼は赤く腫れており、しなやかな髪はぐしゃぐしゃとなっている。
P「よかった……。家に居たんだな」
ハム蔵「響」
響「イヌ美を使うと思ったから急いで家まで戻ったのにやっぱり見つかるものは見つかるんだね……何か、自分疲れちゃったよ」
P「疲れたってのは……走ってきたとかそういう事じゃなくて、アイドル業がか?」
響「……うん。最初は凄く楽しくてね、美希が言うみたいなキラキラ出来る事が楽しく感じてさ。皆と一緒ならトップアイドルになれるんじゃないかって、そう思えたんだ」
響「それなのに自分だけアイドルランクDまで落ちちゃって、頑張って戻ろうと必死にレッスンや営業を熟してみたけど……今までとやってた事と違いすぎて何か、自分の理想とかけ離れていく感じがしてさ」
響「別にもうアイドルじゃなくて別の仕事でも就いた方がいっそ楽なんじゃないかなって……。最近学校も行ってなかったしこれを機に普通の高校生に戻るのも」
響「これって、甘えかな? プロデューサー。ハム蔵」
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