過去ログ - フィアンマ「右手が恋人なんだよ」
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43: ◆H0UG3c6kjA[saga]
2012/06/01(金) 20:23:08.85 ID:4EQZeCPk0
目を閉じるだけという行動。どの様な調査でその結果を知り得たのかはフィアンマ当人しか分からないが、事実をもって、フィアンマはこくりと頷いた。
「…あるべき状態に戻った、ということか。さて、長々と付き合わせてしまって申し訳なかったな、上条当麻。そろそろお前を病院に送らねばなるまい。とはいっても俺様はまだ準備がある以上、此処からは動けないのだが」
肩をすくめてそう告げたフィアンマは徐に上条の身体を右手で掴み、野良猫を自宅へと持ち帰る様に気軽な様子で『ベツレヘムの星』内を歩いた。
向かった先は、脱出用のコンテナが並ぶ場所。
ほとんどのコンテナは破壊され、或いは潰れ、使用できない状態に成り下がっていた。
無論、上条とフィアンマの戦闘の影響である。
「個人用が一台か。お前が乗って脱出する分には問題ないな。とりあえず、俺様にやられた、助けてくれと言えば、魔術師の大概は助けてくれると思うぞ。ある程度の実力を持ち合わせた数人は残っているだろう。もし居なかった場合は…これを使え。電波は周辺のものを勝手に拾う。知り合いの声があれば応答すれば良い。禁書目録は今頃イギリスで問題なく目を覚ましているはずだ」
完全に戦意を喪失した上条は、渡されるままに、魔術的な加工の施された無線機を左手で受け取る。
そのままコンテナに押し込まれ、フィアンマの手により、ガチャリと錠前が閉められた。
流れる様に、安全な軌道を辿って『ベツレヘムの星』から消え去っていったコンテナを視線だけで見送り、フィアンマは欠伸を噛み殺した。
そうして儀式場へと戻り、丁寧に作業をする。
作業を終えて。
完全な姿―――最早『神の如き者』と入れ替わりそのものと化した自らの恋人たる『聖なる右』を見、フィアンマはいつも通り、幸せそうな笑みを浮かべた。
男性とも女性ともつかぬ神秘的に美しい、どちらかといえば男性的な天使に、フィアンマはそっと寄り添う。
『聖なる右』―――『神の如き者』は拒否をするでもなく、ただ静かに従った。
天使はその身を火で。
つまりは純粋な霊体、霊質で構成され、肉体、物質よりも高貴(光輝)であり優れている。
その身を与えられた天使は神を絶対の存在として崇め、その身を神の手足をなって従事する事を至福とし、それによって愛されていると感じる存在。
『神の如き者』にこれといった意思は宿っていなかったが、フィアンマが愛すれば愛する程、『神の如き者』もフィアンマを深く愛した。
至福に満たされていた。そういう意味では、『聖なる右』を愛した彼が完全に狂っていたとは、何人にも断言することは出来ない。
例えどんなに形や呼称が変わっても、『神の如き者』はフィアンマに仕え、意のままに動く。
分かりやすく言えば、『聖なる右』という一部分ではなく、その力が天使の形をとったということ。
自分の身長を遥かに凌ぐ『神の如き者』にすり寄り、フィアンマは無邪気にはにかんだ。
『神の如き者』はそっと腕を伸ばし、フィアンマの頭を撫でる。
よくやったと、父親が子を褒めるかの様な手つき。
『神の如き者』が仕えるは、神のみ。
しかし、フィアンマの状態や身体は神聖過ぎるがために、神の状態を逸脱している。
狂信者且つ救世主が目指した結果。つまりは、『神上』。
『神の如き者』は『光を掲げる者』の双子の弟、もしくは弟とされている。
そして『光を掲げる者』は神から溺愛されるが故に、その神によく似ていた。
当然、そんな『光を掲げる者』と、弟たる『神の如き者』はよく似ている。
つまり、自らによく似た造形の『神の如き者』を抱きしめ、それでも尚、フィアンマは満足そうに微笑んだ。
もうこれで離れる事はない。
何かに怯える必要もない。
世界は救った。約束は果たされた。
此処からの歴史は、新たなる『新約聖書』として記すべき事項だろう。
また、右方のフィアンマ…『神上』となった彼には、元々聖書を記すという奇跡が赦されている。
『ミハイルの福音書』。
そう名付けるのであれば、救われた『後の』世界は福音に包まれ――――。
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