過去ログ - アイマス1レスSS集
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52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]
2012/07/01(日) 22:29:48.79 ID:tglcIbDdo
「笑えよ。春香」

ひどく静かなところで、俺は春香に話しかける。
春香は俺の言葉ではすこしも反応してくれない。

「笑ってくれよ。春香」
もう一度語りかける。
やはり春香は、俺の声に応えてくれない。
ぴくりとも、動かない。

「春香……」
背後から声が聞こえた。
千早だ。

「どうして……。どうしてなんですか。プロデューサー……」
千早は春香を見下ろしながら、言葉で俺を責めた。

俺は千早に、何も言い返せない。

「何で、こんなことに……」
千早はそう言うと歯を強く食いしばり、春香から顔を背け涙を流していた。

少しばかり、時間が流れた。
千早の洟をすする音だけが聞こえた。

「……もう時間ね」
千早がまた声をあげた。
もうこれ以上は、ここで春香を見ることは出来ないらしい。

「行きましょう」
千早は思い足取りで、俺のところに歩み寄ってきた。


「もう行きましょう。春香」
千早は、桶のふちで顔を伏せている春香の肩に手をおき、声をかけた。

春香が顔を上げる。
のろのろと体を持ち上げた。
顔はもちろん、笑っていない。

服の袖で目をこすり春香は、もう動かない俺に向かって言った。

「さようなら。プロデューサーさん」
春香の顔に笑顔はない。

蓋が閉じられた。
桶の乗せられた台車が、口を開けたかまどの鉄扉まで移動させられる。

「笑えよ。春香」
最期くらい笑って送り出してくれよ。

視界の下が、白くもやがかってきた。
どうやらお別れらしい。

視界の半分が見えなくなったあたりで、
最期に見た春香は、やっぱり笑っていなかった。


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