過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝】その８ -SS速報VIP

過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝】その８

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801:一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo.[saga]
2012/07/08(日) 23:09:44.63 ID:WbNBgeGHo
如南。

とりたてて特徴のない都市である。
度重なる叛乱、天災によりその城壁は綻びが目立っていた。
母流龍九商会が本格的に手を入れる前にことを起こせたのはよかったのかもしれない。
そんなことを思いながら、袁胤はじ、と戦況を見やる。

兵力的にも圧倒的に優勢。
で、あるのに。

「ふむ、中々に粘るのう……」

ほ、ほ。優雅に笑みを浮かべながらもちり、と焦りが胸に兆す。
あのような薄い城壁、門扉がなぜ落ちない、と。
既に攻め寄せてから三日が過ぎている。その日の内にも落とせると見込んでいたのだが。

「李儒め、どうせならば櫓車か衝車くらいは用意しておけというものよ……」

……そんな金のかかるものを常備しているのは袁家くらいのもの。
で、あるからこそ本来の手勢をもって蜂起したかったのだ。

城壁には梯子がいくつも架けられ、幾度も侵入を果たしている。だが、そのたびに撃退されている。

ぼ、と火の手が上がる。無論城内ではない。梯子を上る寄せ手に煮えたぎった油が撒かれ、そこに火種を落としこんだのだ。

「ち、顔家の小娘め。余計なことをしよってからに……」

許攸は舌打ちしながら忌々しそうに呟く。本来遊軍たる紀家軍の手の者に防衛戦のノウハウはない。それがここまで粘るというのはおそらく顔良がその秘伝を何らかの形で伝えていたのであろう。
……実際これには過去に行われた軍制改革の際に各家のノウハウがマニュアル化されているというのが大きい。
とは言え、顔家の手兵と実際に相対することになればもっと手こずったに違いないが。

だが、時間の問題であろう。
解せぬほどに激しい抵抗とて、数の暴力、心身の疲労には敵わない。

城門に丸太を束ねた即席の破壊槌が打ち付けられ、大きくヒビが入る。
させるまじと矢の雨が降り注ぐが、時を同じくして幾度目かの城壁への侵入を果たした寄せ手が暴れまわる。

「勝った、のう……」

もう一押しで落ちる。そう確信し袁胤は口を歪める。

どよ、と如南からざわめきが聞こえる。いよいよ陥落するにあたり、此方になびく兵でも出たか。
そうだとすれば実に興醒めである。

「雅ではおじゃらんのう……」

独白は戦場の喧噪にかき消され、誰の耳にも届かなかった。

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