過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝】その８ -SS速報VIP

過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝】その８

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846:一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo.[saga]
2012/07/11(水) 23:52:57.47 ID:lX1WXKObo
戦況は動く。
拮抗、膠着から大きく動く。孫家の介入により、一気に傾く。
兵数では未だ袁胤配下の方が多い。だが、いまや流れは兵数の多寡など関係ない。
趙雲はにやり、と笑いながらもちり、と悔しさにその肺腑を焼く。
紀家軍最精鋭の騎兵、そして全騎馬を動員してなお、戦局を傾けることはできなかったのだ。

「だが、このまま終わるそれがしではないっ！」

既に配下の騎兵は疲弊しつくしている。
人馬共に強行軍の後の激戦である。しかも何倍もの敵兵に薄氷を踏む様な戦い。
心身ともに消耗しつくし尚、敵陣を削る彼らには大いに讃辞が贈られるべきであろう。が。
戦とは結果が全て。そして趙雲の率いる騎兵は戦場を膠着に落とし込むことすらできなかったのだ。

今や思いのままに操れるのはわが身と操る騎馬のみ。

ならば。

「東海帝王よ。もう、一働きを、頼む」

諾、と一声いななくその声に満足気に笑う。

「やあやあ、遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ！
　怨将軍の一の家来、趙子龍の槍の冴え、身を以って味わうがよい！」

名乗りの後、疾風。

最大戦速で敵本陣に身を躍らせる。もはや兵の指揮など眼中になく、ただ突破を。
陣構えの間隙を縫うように走り、本陣に迫る。その動きに敵ばかりか味方も対応できず、ただ見守るのみ。
東海帝王はここにきて初めてその脚力の本領を発揮し、影すら踏ませない。汗血馬の面目躍如である。

「袁胤殿！お命、頂戴！」

ついに本陣の奥の奥。袁胤に単騎で迫る。その異常事態に誰も彼もが見送ることしかできない。

愛槍、龍牙を勢いそのままに振り下ろす。必殺の一撃。

ガン！と鈍い音が響く。趙雲の必殺の一撃を袁胤が手にした軍配で弾いた音である。

「ちいっ！」

舌打ちしながら馬首を巡らす趙雲の目には、袁胤を守護せんとする兵達の姿が映る。このまま再突撃しても阻まれてしまう！

「ええい！ままよ！」

馬首を巡らす鞍上に身を翻し、跳躍する。
渾身の一投。

「はあああああああ！」

がき、と再び軍配がその進路を阻む。
が、既に袁胤の腕は初撃で使い物にならないほどにズタズタになっており。

首を貫かれて倒れ落ちるその姿を趙雲は東海帝王の鞍上に再び着地し、跨りながら確認する。

「討ち取ったり！趙子龍、敵将袁胤討ち取ったり！」

敵陣の最奥で勝ち名乗りを上げる趙雲。
なるほど、全身これ肝なり。

或いは復讐に駆られた敵兵に包囲されてもおかしくない状況での彼女の名乗りに、敵陣は崩壊する。
所詮は雇われ兵である。圧倒的な兵力の差で保っていた士気は趙雲の出現、孫家の蹂躙により低下の一途。
そして決め手は袁胤の戦死である。

かくして、勝敗は決したのである。

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