8: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:03:06.70 ID:bzATqBdvo
「ううん、違うの。色々思い出してただけ」と、目を伏して首を横に振った。
崩れた髪を整えながら二人と一緒に歩く。
私の『色々思い出してただけ』という言葉には触れず、
9: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:03:39.05 ID:bzATqBdvo
三ヶ月前の私なら、素直にライブを楽しめただろうか。
とてもそうは思えない。
それ以前に、『さわ子先生に何かしたい』という言葉も出なかっただろう。
――このクラスになって本当に良かった。
10: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:04:07.53 ID:bzATqBdvo
先を行く二人を見つめながら、私はもう一度空を見上げた。
二月にしては澄み切った空だ。
卒業式までこの天気が続けばいい。
未来のことはわからない。でも、今の私は満ち足りている。
11: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:04:49.30 ID:bzATqBdvo
「どこ行こっか?」
抜けているのを取り繕うように、少し慌てて声を出した。
「ハンバーガー食べに行こうよ」と、素早いなっちゃんの回答。
12: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:05:17.41 ID:bzATqBdvo
――――――――――――――――
図書室の窓枠越しに空を見ていると、一羽の鳥がそこを横切った。
外には灰色の空が広がっていて、十二月ということを実感させる。
13: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:05:43.64 ID:bzATqBdvo
「夏香、そろそろ自分で考えたらどう?」
私の正面に座っている英子ちゃんがすかさず口を開き、
なっちゃんは決まりが悪そうに答える。
14: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:06:11.09 ID:bzATqBdvo
割り込んでいいものかと思ったが、すでに言葉が先走っていた。
「まあまあ英子ちゃん、人に教えるのって自分の勉強のためにもなるんだよ」
「そう――、それならいいけど。あんまり夏香を甘やかしちゃ駄目よ」
15: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:06:52.29 ID:bzATqBdvo
正面に向き直ると、本棚の隙間から近づいてくる人影に気付いた。
見慣れた赤い眼鏡、和ちゃんだ。
「英子、ここいいかしら?」
16: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:07:22.58 ID:bzATqBdvo
もともと私は数学が得意なほうではなかった。
かといってどうにもならないほど苦手なわけではない。
やはりみんなで勉強をしているからだろう。
自分では解決出来なかった問題でも、
17: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:07:51.48 ID:bzATqBdvo
夕日が差し込み、図書室の一角をオレンジ色に染めている。
黒い影とのコントラスト。
その様子に目を奪われていると、
なっちゃんの手が止まっていることに気付いた。
18: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:08:47.49 ID:bzATqBdvo
「わかってるって。じゃあさ、本屋だけ行こう」
「ちょうどいいわね、買いたい本があったのよ」
和ちゃんも乗り気のようだ。
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