過去ログ - QB「魔法少女達の軌跡」 -SS速報VIP

過去ログ - QB「魔法少女達の軌跡」

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233:激弾・紅孔雀[saga]
2012/12/06(木) 20:29:53.49 ID:U3hwOY4R0

　最後の砦、和はふぅ、と溜息を吐き出した。
「全く……無茶苦茶過ぎて見てられない……」
　ぼやき気味に口を開いた後、改めて魔女に向けて刀を構える。魔女のダメージも大きいと見据えて、ここが勝負所と決めていた。
（……斬る）
　和は、全身に流れる魔力を集中させる。真っ直ぐに地面を蹴り、魔女との間合いを一気に縮める。
　魔女から出ているヒラヒラとしていた布は、何時の間にか鋭利に尖っていた。無数の布は、和の体を鋭く切り裂く。
　しかし、体に無数の傷が走っても、和は丸で怯んでいない。更に魔女から受けた傷は、自動的に回復していくのだ。
　魔女を射程圏内に捉え、和は刀を振り被った。
「……終わりだ!!」
　ズバン、と魔女の体を、一刀両断。
　僅かに上がった魔女の叫びは、最後の断末魔だろう。真っ二つに横たわる魔女の体は、すぐさま消滅していった。

　結界が消滅すると、夜空に浮かぶ月が魔法少女達を照らした。
　我先にグリーフシードを拾い上げた和は、穢れを浄化しつつ、他の三人を見る。一番重症なのは、圭であった。
　浄化を一旦止めて、圭の側に歩み寄った。激痛で、表情険しく息使いは荒い。
「……無茶な戦い方は、身を滅ぼすぞ」
　和は注文を付けながら、圭の右腕に両手をかざす。紺色の光が右腕を包むと、見る見る内に傷が治っていく。
「……どうなってんだ？」
　痛みから解放された圭は、驚いた様子で和の顔を見る。
「大した事はしていない。私の固有魔法は、回復だからな」
　和は淡々と答えた。
「他の二人にも、やらなくちゃならないからな。悪いが、先に浄化させて貰った」
　和はそう言いながら、圭にグリーフシードを手渡した。

　魔女討伐も何とか成功し、和の魔法のお蔭で、傷も体力も皆回復できていた。
　ただし、強い魔女のグリーフシードと言えど、四人分の穢れを全て浄化するまでには至らなかった。若干だけ穢れが残るが、日常生活には支障は無いレベルだ。
「しっかし、アンタの言うとおりだったよ。アタシ達だけじゃ、多分負けてたね」
　圭は素っ気なく感謝の言葉を述べた。
「ありがとうね……えっと……」
「……相馬和」
「ありがとう、和ちゃん」
　洋子は、満面の笑みを見せながら、和に頭を下げた。
「……今回は貸しにしとくよ。次会う時は、こうはいかないからね」
　知美からの礼の言葉は、相変わらず強気の物だった。
「知美はそう言ってるけど、実はまだ契約して三か月位だからね。まだ新米の方だよ」
「キュウべえ!!　余計な事言うなっつーの!!」
　知美はムスッとしながら、キュウべえを睨みつける。
「はっはぁ～……随分と偉そうに言ってた癖にねぇ」
　圭はジト目で知美をからかい始めた。
「このヤロ……言わせておけば」
「魔女にあっさり捕まってたしね～」
「もー我慢出来ない!!　今すぐ張り倒してやる!!」
　圭の挑発のせいで、二人はまたしても睨み合う。
「圭ちゃんも、知美ちゃんもダメだって!!」
　洋子は間に入って、仲裁を試みた。しかも、二人の隙間には、事前にバリアを張っている。実に用意周到だ。
「次喧嘩した所で、回復はしてやらないよ」
　和は呆れ果てて、二人を放置する決めているようだ。
「……やれやれ。この街の魔法少女達を見ていると、先が思いやられるよ」
　キュウべえでさえ、さじを投げだす始末だった。

　この四人の魔法少女達の出会いは、大きな運命の分岐点となる事。
　しかし、誰一人としてそんな事は知る由も無かった。

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