過去ログ - P「お前の夢にはついていけない」律子「……そう」
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(神奈川県)
[sage]
2012/06/22(金) 22:07:15.45 ID:FuSozdXdo
そうか、と律子は思う。
この子は、私を継ぐつもりなんだ、と。
彼女は人気絶頂で引退した。
誰もが避ける日高舞と発売日を同じくしてランキング争いをし、それに勝利することもしばしばだった彼女が、まさにその頂点を極めたところで
引退コンサートを大々的に開き、アイドルを辞めた。
それは彼女やプロデューサーにとっては最初から予定していたことであり、そこに向けて全力を費やしてきたことでもある。
だが、ファンにしろ、同業のアイドルにしろ、それを容易く受け止めることが出来るだろうか。
まさにトップにある人間が、その座を明け渡す。その行為を見て、人はどう思うか。
ある者は嘆き、ある者は惜しみ、ある者は羨み、ある者は賞賛するだろう。
そして、目の前のこの少年……否、男性は、また別の感慨を持った。
彼女が手放した頂点に、自分が挑んでみせると。
「本気みたいね」
こくりと頷く涼。
彼の決意は、あるいは律子が近しい存在であるからこその使命感であるのかもしれない。
彼女に出来るのならば自分にも、という感覚もあるだろう。彼女が見たものを自分も味わってみたいという欲もあるだろう。
たしかに、彼にはそれだけのポテンシャルがあるのだから。
だが、きっと、真意はそんな打算的なところにはない。
おそらくは、そう、おそらくは、彼は、彼女が去った後の場所を、他の誰かに渡したくない。ただ、それだけなのだ。
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