過去ログ - P「お前の夢にはついていけない」律子「……そう」
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(神奈川県)
[sage]
2012/06/22(金) 22:00:00.24 ID:FuSozdXdo
「入っても大丈夫かな?」
「あ、うん。どうぞ」
招き入れながら、そういえば、涼には事務所立ち上げの話をしていたし、見学にも来たいと言っていたのだっけ、と思い出す律子。
「へー……ここが……。すごいなあ」
きょろきょろと物珍しげに見回す涼に、律子は苦笑する。
彼に底意があるわけもないのに、あるはずのない棘を感じ取ってしまう自分に対して。
一方、涼のほうは周囲への関心がひとまず収まったのか、律子当人へと視線を向ける。
「そうだ、律子姉ちゃん。引退コンサート、本当によかったよ」
「何度も聞いたわよ」
「何度でも言いたいんだよ」
彼は、姿勢を正し、深々と頭を下げた。心を込めた声が、二人だけの事務所に響く。
「お疲れ様でした」
「……ありがとう、涼」
小声で呟く律子の声が潤んでいる。アイドル仲間ではありながら、それとはもっと別のつながりのある彼にそんなことを言われるのは
なにか感じるところがあるのだろう。
「それはともかく!」
照れくささを振り払うように涼は必要以上に明るい大声で言って顔を上げた。
「これからは新しい門出だね。そっちもおめでとう」
「最初からつまずいたけどね」
「え?」
涼の呆気にとられたような顔に、律子はもう一度ため息を吐く。
「座って。愚痴るから」
「あ、う、うん」
言われて、涼は律子の正面に椅子を移動させ、自嘲気味に始まる彼女の話に耳を傾けるのだった。
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