4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/06/28(木) 05:03:46.06 ID:EJ9MWvt0o
人を殺した夜は眠れません。
いつ警察が私を訪ねてくるだろうと、不安に苛まれます。
そんな時は兄さんの部屋をノックします。
お決まりの合図は2回。そっと響かせるように、分けて、2回。
起きていれば、兄さんは蝶番を軋ませて私を部屋に招き入れます。
照明はベッドサイドのスタンドだけ。
ベッドに投げされた文庫本。皺の付いたシーツ。昼間よりも穏やかな兄さん。
「今日はどうしたんだ?」
キャスター付きの椅子に跨り、首を傾げる兄さん。
私は視線で了承を得て、ベッドに腰掛けます。僅かに軋む音。
「……不安なんです」
それだけを呟きました。
本当に言いたい事も言わなくちゃいけない事も、すべて胸の内に仕舞ったまま。
言葉を紡ぐのがヘタだから。紡いだ想いは嘘になるから。言えるはずがないから。
「不安というのは、すべて未来にあるものだ」
いつも通りに、兄さんは私の心を詳らかに知るかのように振る舞い、問い質すことなく悩みに答えてくれます。
「安らがず。……未来に起きる何事か、いや、何事も起きない未来にかに、お前は怯えているんだね」
こくりと私は頷きます。
「お前がそうして悩むのだから、きっと解決は難しいんだろうね。不可能なのかもしれない」
その通りでした。警察の手が止むことは、たとえ私が殺人を止めてもないはずなのです。
12Res/10.65 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。