過去ログ - キリコとコブラでむせる
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11:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:19:21.65 ID:n3CjMYIK0
 ファッションモデルのようなスタイルだ。

 腰から垂れ下がった弛んだガンベルトが、美女の白い尻の辺りで止まっていた。

 コブラの視線が女の相貌を射抜く──ジェーン──女は殺されたジェーンと瓜二つだった。張り詰めるコブラの鼓動。
 たわやかな金髪、コブラを魅了した大粒のエメラルドの瞳、全てがジェーンと同じだ。
 
 いいや、ジェーンは死んだ。そして、ドミニクもロイヤル三姉妹は、もうこの世にはいない。

 表情を硬直させたコブラを見て、勘違いしたバーテンが気付かれぬように忍び笑いをもらす。
 「ビールを一杯頂戴」
 ハスキーボイスだ。女にしては、やや低い声だった。
 「ちょっと待ってな」

 バーテンがビールサーバーから、ジョッキグラスにビールをなみなみと注いだ。
 泡立つビールが、グラスから少し溢れる。バーテンがジョッキをカウンターの端まで滑らせた。
 タイミング良く女がキャッチする。

 「景気はどうだい、ナチ?」
 「まあまあってとこね。そちらのお兄さんは?」

 ナチがコブラのほうを向いた。必死で笑いを堪え、バーテンがシンクに溜まった食器を洗う。
 いつものように陽気な笑みを浮かべ、コブラがナチにいった。

 「ただの二枚目さ」と。
 ナチが呆れかえった。それから楽しげに笑い出す。
 「おかしな人ね。自分から二枚目だなんて言い出すなんて」
 ナチがコブラの隣に座り、ビールを一口啜る。ビールの苦味と炭酸が、ナチの口腔内に広がった。

 「ナチっていったっけか。君はどんな仕事をしてるんだい。銃をぶら下げてる辺り、ただのショーガールにゃ見えないが」
 「何に見える?」

 「そうだなあ、女賞金稼ぎってとこかな?」
 自然とコブラの唇から、賞金稼ぎという言葉がこぼれる。かつてのジェーンもバウンティーハンターだった。
 ナチを一目見たとき、コブラの胸裏深くに沈んだジェーンやドミニクとの思い出が、浮かんでは消え去った。




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