12:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:21:38.93 ID:n3CjMYIK0
「賞金稼ぎ兼ボトムズ乗りってとこかしら。この星にはお尋ね者も多いし、傭兵仕事も腐るほどあるから、稼ぐには持って来いよ」
コブラがスツールの背にもたれかかり、ヒューっと口笛を吹いた。
「女のボトムズ乗りかあ、渋いねえ」
突然、バーテンの笑い声がカウンターに響いた。腹を抱えてひゃっひゃっひゃと笑い続ける。
「おいおい、何がそんなにおかしいってんだ?」
「ひっひっひ、おかしいもおかしくないも、ひっひ、そいつは男ですぜ、旦那ッ!」
コブラが呆気に取られる。
「驚いた。君は男だったのかい?」
コブラが新しい葉巻を口に咥えた。マッチの頭を爪でこすり、ナチが火をつける。
そのまま、コブラの葉巻に火を移した。
「まあね」
ストリートに立ち並んだ露店の行商人達が大声を上げ、客を呼び止める。
行商人のひとりが、背中にイボを乗せた大きな牛蛙の足を引っつかみ、純粋な蛋白源はいらねえかっ、と威勢良く声を張り上げた。
酒と女に浮かれ騒いだ傭兵達が行商人を冷やかす。ドラッグのキレたヤク中がショットガンをぶっ放す。
毒々しくも色艶やかなネオン──その下を通る路上の人込みは絶える事を知らなかった。
安物の香水/濃い化粧/泣き黒子/路地の一角に集う娼婦達。
通行人に小銭をせびる老婆、路地裏にあるポリバケツの生ゴミを漁るホームレスと孤児。
周りから声をかけられ続ける。キリコは気にもかけずに歩き続けた。
たどり着いた「ハッシュ・ハッシュ・ハッシュ」のドアをくぐる。居た。コブラ、それと見知らぬ女がひとり。
コブラがキリコに気付き、一杯どうだと誘った。
皿に盛られたピーナッツのチップスを頬張り、コブラがウイスキーで流し込む。
「あら、いい男じゃない」
ナチが目ざとくキリコを見やる。キリコはナチを無視した。
「何にしますか、兄さん」
「酒はいらない。コーヒーをくれ」
了解と応え、バーテンがコーヒーを沸かす。
おーい、こっちにはバーボンをくれと、コブラが空になったグラスをかかげて酒を催促する。
コーヒーが沸く間にバーテンがバーボンのボトルをコブラの目の前に置いた。
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