過去ログ - キリコとコブラでむせる
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13:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:22:18.25 ID:n3CjMYIK0
 「ナチ、一杯どうだ?」
 「頂くわ」
 キリコが酒の相手をしないとわかると、コブラはナチを酒の相手に選んだ。コブラがナチを見て、溜息を漏らす。
 「はあ、しかし勿体ねえな。こんな美人だってのに、男とはね」
 「残念だったわね」
 
 ルージュ色に輝く薄い唇をグラスにつけ、ナチはバーボンを口に含んだ。

 

 
 アルディーンの首都──クルンテープ──意味は神の都だ。
 神の都──なんとも皮肉の利いた名前だ。ここでは誰もが死の恐怖に晒されている。
 男も女も老人も幼子も人はいつか死ぬ。問題なのは、その死に方だ。

 愛する者に見取られて死ぬか、それとも戦場の炎に巻かれて死ぬか。
 クルンテープではまともに[ピーーー]る者は少ない。それでもここの住民達は銃を手に取り、ATに乗り込んでは戦い続ける。
 
 酒場から西へ十二ブロック離れた地域を二人は歩いていた。アルディーンはどこもかしこも物騒だ。
 頭のイカレたならず者が、突発的に通行人を銃で撃つ。
 ホルスターに手をかけ、暗がりからこちらの様子を覗っているチンピラ──コブラがウインクを投げた。

 コブラに毒気を抜かれたチンピラが、暗がりへスゴスゴと退散する。
 
 どこの路上にも家を焼け出され、親を失ったストリートチルドレン達がいる。
 配線に止まるカラスのように、横に並んで物欲しそうにこちらを見ている。

 コブラがポケットを探り、小銭を掴むとストリートチルドレン達に向かって放り投げた。
 ばらまかれたギルダン硬貨に孤児達がわっと群がる。

 「そういえば、キリコ、バトリングって知ってるか?」
 「ああ、知ってはいるが、それがどうしたんだ」

 「バーテンから聞いたんだが、ここで行われる闇バトルってのは、えらく儲かるらしいな」
 「出場する気か?」
 「いいや、ただ、ちょっとばかし金庫に興味があるだけだ。闇バトルの賭け金が詰まったな。何も盗もうってわけじゃないぜ。少しの間、借りておくだけさ」

 「やめておけ」
 素っ気無いキリコの態度にコブラは小さく頭を振ると、両手で後頭部を揉んだ。
 「ああ、どっかに儲け話は転がってないもんかね。こう、どかっと大金が転がり込んでくるような」
 「そんなに金が欲しいなら、バトリングに出て、自分に金を賭けるといい」
 「ふーん、そいつも結構悪くないな」

 こいつは名案だとコブラが手を叩く。隣では、錆びた給水塔からこぼれた水を野良犬がぴちゃぴちゃと舐めていた。





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