過去ログ - キリコとコブラでむせる
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18:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:27:47.19 ID:n3CjMYIK0
 激しい熱気がバトリングドームを包んだ。絶叫、怒号、声援、あらゆる叫びがドーム内で反響した。
 観客達のギラつく視線が、頭上に高々と上がったパネルの文字にに絡みつく。
 「負けるなっ、コブラッ」

 「やっちまえっ、ガーランドッ!」
 誰もが血に飢えていた。日頃の鬱憤を晴らす為に、観客の誰もが血を求めていた。

 改造したダイビングビートルのハッチを閉め、ガーランドは客の待つドームへと飛び込んだ。
 ざわめく観客達が次々に声援をあげる。続いて、向こう側からもスコープドッグが飛び出してきた。
 一晩で破竹の十連勝を遂げた新人のコブラ、対するはバトリングチャンピオンのガーランドだ。

 否が応にも期待は高まる。押し寄せた観客でごった返す会場は人、人、人の人だかりで埋め尽くされた。
 ガーランドが舌打ちをする。バトリングの王者は俺のはずだ。なのに声援の数は奴のほうが多い。
 二階から身を乗り出したナチが、コブラに投げキッスをした。

 面白くねえとガーランドが、コブラの乗った機体を睨みつける。

 あのニヤついた顔も二枚目気取りの態度も何もかもが胸糞悪い。

 ガーランドはバトル開始の合図とともに、コブラ目掛けてありったけのミサイルポットをぶっ放した。
 「おっとっと」
 脚部のグライディングホイールを素早く回転させ、コブラが横に逃れた。

 獲物を見失ったミサイルがむなしく空を飛び、壁に激突して爆発する。爆風に何人かの客達が巻き添えを食らった。
 それでも観客達は驚くような素振りもみせず、逆にヒートするように声を張り上げた。

 「くそっ」
 ガーランドが毒づきながら旋回しつつ、コブラにミッドマシンガンの弾をばら撒く。
 「おい、どうした、でくの坊。さっぱり当たらんぞ」

 ガーランドは焦った。いくら撃っても弾が当たらないのだ。何発かの弾がスコープドッグにかすり、火花を散らしただけだった。

 そうしていている内にスコープドッグが、お返しとばかりにこちらに向かってマシンガンの雨を降らせてくる。
 ダイビングビートルの前腕部が、マシンガンもろとも空中に舞い上がった。誰の眼にも勝負は決まっていた。
  
 その鮮やかな手並みに観客達が姦しい嬌声をあげた。
 「どうした、まだやるか?」
 「ううっ」
 ガーランドが呻いた。その刹那、ガーランドの乗っていたダイビングビートルをロケットランチャーが吹き飛ばした。
 
 唖然とする観客達──それを尻目に深紅の機体が、会場の選手ゲートから悠々と姿を現す。
 「ありゃ、サラマンダーだぜ……」
 客のひとりが呟きを漏らした。
 「あいつがサラマンダーか……飛び入り参加ってこたあは、ひょっとして……」
 死んだように静まり返っていたバトリング会場が、突如として息を吹き返すように唸りあげた。



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