2:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:12:08.38 ID:n3CjMYIK0
灰色のコンクリートでできた街路、壁に貼られた賞金首のポスター、
方眉をつりあげ、バイケンが不機嫌そうに灰になりかけた葉巻を吐き捨てる。
「ナット、最近売り上げが落ちてねえか」
「バイケンさん、この頃、銀河パトロールの目がうるさくて、ロド麻薬が思うように売れないんでさァ」
言い訳がましい売人の元締めにバイケンは一発蹴りをくれてやった。それも睾丸のど真ん中にだ。
身体をくの字に曲げ、呻くナット──バイケンが引き抜いた拳銃をナットの額に押し付けた。
「ナット、お前が手下の売人どもから金をチョロまかしてんのは知ってんだ」
恐怖のあまり、ナットの全身が硬く強張った。バイケンが三十八口径の銃口を額の皮にぐりぐりと押し付ける。
ネズミをいたぶる猫のように、サディスティックにネチネチと。
「か、勘弁してください、バイケンさん、出来心だったんです……」
ナットは胸の辺りで両手を握り合わせ、バイケンに許しを求めた。それに対するバイケンの返答。
「勘弁できねえな、ナット、俺はそこまで心の広い男じゃねえ」
銃口が火を噴いた。銃弾がナットの額から後頭部へと突き抜ける。血と脳漿がザーメンのように派手に吹き飛んだ。
髪の張り付いたピンク色の肉片が、壁に付着する。地面に散らばったナットの砕けた頭部を踏みつけ、バイケンはせせら笑った。
「ひひひっ、俺の金をチョロまかそうなんざ、百年早えんだよ、なあ、ナット」
「また派手にやったもんだな、バイケン」
突然後ろから何者かに声をかけられ、バイケンは驚きながら振り返った。全く気配を感じなかった。それこそ微塵もだ。
「そこにいるのは誰だッ」
バイケンは叫んだ。振り向きざまに叫んだ。
暗がりから、こちらを覗く一体の影法師──影法師がジッポーライターに火をつけた。
ライターの炎で、葉巻の先を炙る男の素顔──バイケンは、映し出された男の顔に見覚えがなかった。
男の髪は短めのブロンドヘアで鼻は丸っこい団子鼻だった。目は垂れ下がって、口元がしまりもなく、にやついている。
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