過去ログ - キリコとコブラでむせる
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20:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:29:19.86 ID:n3CjMYIK0
 カン・ユーは動く標的を見極めようと目を凝らした。コブラがカン・ユーを巧みに掻き乱す。
 鼓膜を打つ甲高い衝撃音──カン・ユーの右頬を粘つく血が伝った。こめかみに浮かぶ血管が脈動した。

 体内で過剰に分泌されるアドレナリン──沸騰する血液。カン・ユーの身体が火照った。熱い。なんて熱さだ。
 
 身体が疼いた。その癖、頭だけが妙にはっきりと冴えきっている。舞い上がった砂塵が二人の機体を飲み込んだ。
 観客達が、砂煙の向こうで繰り広げられる戦いに固唾を呑む。
 スモッグの中で、狂ったように飛び交う弾丸の嵐──これでは埒が明かないと、カン・ユーはマシンガンのトリガーから指を離した。

 視界を奪う砂塵が口惜しい。カン・ユーは背後に注意しながら、見えなくなったコブラの姿を探した。
 意識を集中させる。一瞬、横からスコープドッグの気配を感じた。素早く半回転し、カン・ユーがトリガーを引く。

 耳をつんざくようなスコープドッグの悲鳴──激しい銃弾が火花を散らし、鉄の装甲を食い破った。
 ──やったかっ!?
 カン・ユーがスクラップと化したスコープドッグにターレットレンズを向ける。

 レンズを拡大し、スコープドッグの残骸を見回すが、コブラの死体はどこにも見当たらなかった。
 ──奴め、どこに消えおった。
 「ここさ」
 カン・ユーはカッと眼を見開いた。おぼろげな人影──砂塵に乾いた銃声とまばゆい光線が交錯する。

 サイコガンがカン・ユーの眉間を穿った。

 操縦者を失った機体が停止する。操縦席に前のめりになり、カン・ユーは虚空を見つめたまま絶命した。

 「俺のサイコガンは気配だけで相手を射抜くのさ」




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