34:S・エルロイ[saga(≠sage)]
2012/07/01(日) 05:57:50.92 ID:FiCMgbbE0
相手の顎に右フックを叩き込む。いつもと同じだ。それでお終い。血反吐を吐きながらゴリラが床の上にぶっ倒れた。
試合をさっさと終わらせて、ラスのいるテーブルに近づく。
ラスは青白い顔をした撫で肩で、背の高い痩せた体つきをしている三十絡みのギャングだ。
剃刀で刻んだコカインを鼻腔から吸い上げ、鼻の下を白くしたラスが俺に向かって紙幣を投げてよこした。
俺はファイトマネーを受け取ると無造作にポケットに突っ込んだ。ラスが口を開く。
「なあ、ジョー。俺の店でバウンサー(用心棒)をする気はないか。お前みたいに骨のある奴が欲しいんだ。
最近の連中はどいつもこいつも使えねえ奴らばかりでな」
「残念だが、そんな柄じゃない」
舌打ちするラス。どうやら嫌われたらしい。
俺はラスが嫌いだ。こいつは信用できない。俺の知る限りじゃ、ラスに泣かされている人間は多い。
ジャンキーのラス、ろくでなしのクソヤロー……こいつに何人もの女達が骨の髄までしゃぶり抜かれている。
ラスの稼ぎはドラッグの売買と立ちんぼ達のアガリ、それから賭け試合の寺銭だ。
ラスはここら一帯の売春宿とポーカー屋、そして高利貸しどもを仕切っている。
チンピラどもの元締めのラス──俺にとって、ラスは目障りな奴でしかない。
そしてラスにとっても、ファイトクラブで勝ち続ける俺は目の上のタンコブにしか見えないだろう。
午前三時──俺はファイトクラブを出て、途中でタクシーを拾った。
ローザのアパートへとタクシーを走らせる。目的地につくと運転手に金を渡してタクシーを降りた。
階段をのぼっていき、廊下を歩いていくと、俺はローザの部屋の前で足を止めた。
鍵穴に鍵を差し込んで捻る。ノブに手をかけ、ドアを開ける。部屋は暗く、何も見えなかった。
俺は明かりのスイッチを探り当て、ボタンを押した。
赤いカーペットの上には彼女が──ローザが横たわっていた。俺は彼女の前に屈んだ。
眼窩から眼球を抉り取られ、空洞になった両眼にコインが一枚ずつ置かれている。
特徴的な殺しだった。こいつはラス子飼いの殺し屋の手口だ。
ローザ/娼婦/気の良い女/彼女の尻とハートは人一倍でかかった。俺は彼女のくすんだ銀髪を撫でつけた。
お休み、ローザ──仇は俺が討ってやる。俺は静かに立ち去った。ラスの奴に落とし前をつけなくちゃならない。
殺意が闇を満たす。ローザは殺された。ラスにアガリを支払うのを拒んだせいだ。
そういう意味ではローザは馬鹿な女だったかもしれない。
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