過去ログ - キリコとコブラでむせる
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7:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:15:46.78 ID:n3CjMYIK0
 低い空、暗雲が重く圧し掛かってくる。森と森を隔てる川──黒い急流を二体のスコープドッグが泳ぐように突き進む。
 水深に足を取られないように注意しながら、岩床の裂け目に流れ込む、強く引っ張るような川の力をふたりの男は感じていた。

 川岸にたどり着き、泥濘を踏みつけながら、キリコは辺りに敵兵が潜んでいないか警戒した。
 地面から突き出た岩場の影、生い茂った茂みの中、苔むした倒木にカモフラージュし、敵はどこからでも飛び出してくる。
 何の前触れもなく、飛び出してくる。何気なく落ちている枝、松の木から伸びた葉、何気げない自然物でさえ、敵は利用する。

 葉のこすれる音、踏みつけた枝の折れる音、これらの鳴らす音が敵にこちらの存在を告げるのだ。
 ──おい、キリコ、そっちはどうだ?
 コックピット内の通信機からコブラの肉声が飛び出す。
 ──問題ない。
 ──OK、こっちもだ。
 
 互いに背を張り付かせ、死角を補いながら、ふたりはすすむ。目的の場所へと。
 山の冷たい風が、木々の間を通り抜けた。ふたりが深い谷底へと降りていく。
 急な勾配な岩肌を駆けおりると、だだっ広い平地に出た。

 断崖に囲まれた谷間には、障害物や隠れられるような場所はなく、ふたりは敵に会うこともなく目的地へとたどり着いた。
 ──おい、キリコ、なんだか妙な胸騒ぎがしやがるぜ。敵さんは一体全体、どこにいるってんだ。

 コブラは拍子抜けするほど無用心な敵を逆に気味悪がっていた。それはキリコも同感だった。
 ──もしかしたら、罠かもしれない。
 ──俺もそう思うね。それじゃあ、こっちから燻りだしてやるとするか。

 パネルを眺めていたコブラが、おもむろにヘビィマシンガンを乱射する。弾丸を浴びせられた岩壁が砕け、地面が抉られる。
 渓谷に大きく響き渡る銃声、硝煙の匂いが一陣の風に吹き抜けた。
 ──へへ、どうやらおいでなすったぜ。

 地面が盛り上がり、土にまみれた四機のツヴァークがその姿を現した。ローラーダッシュの鋭い回転音。
 轟音をあげ、岩棚から飛び降りた六機のスタンディングトータスが、ふたりの目前へと迫る。
 敵は十機、こちらは二機だ。
 ──面白くなってきやがった。




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