9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/30(土) 23:44:14.47 ID:jiWRSJ+z0
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どのくらい寝ていたんだろう。
なんか夢を見た気がするけど、覚えてない。
次夢を見たら、ちゃんと覚えておこう。
記憶を取り戻す手がかりになるかもしれないから。
相変わらず目は覚めないままで、頭だけが働いている。
こんな生活いつまでつづくんだろう?
今、私はどこにいて、どんな服を着て、どんな風に寝ているように見えているんだろうか。
やっぱり病院にいるのかな。
病室のベッドの上で、テレビドラマみたいに青だかピンクだかの患者服を着て、心電図とか脳波とか測られてるのかな。
そこに自分の姿を当て嵌めようとしても、どうしても顔が、体型が、髪型が、全てが思い出せない。
ちくしょう。こんなにもどかしい思いをするのは初めてだ。
いや、初めてかどうかは、今眠っている私に聞かないとわからないな。
何か、耳に違和感がある。
違う。そうか、音だ。
誰かの声…だろうか。
『はやく、おきてよ………』
!?
聞こえた。
それは一瞬で、すごく小さい声だったけど。
誰だ?
今の声、聞いたことがある気がする。
もう一度聞いてみようとするけど、もう聞こえなかった。
訪れたのは、再び静寂。
途端に感じるのが、寂しさだった。
今まで感じなかったのに、どうして急に…?
一気に寂しさと絶望が込み上げてきて、どうにもならない悔しさと一緒に、ひたすら耐える。
耐えるのも、一人。
苦しくて辛くて、逃げ出したくなる。
でも、いつまでたっても逃げる術なんてないままで。
いっそ、死んでしまった方がよかったんじゃないかって思ったくらいだった。
辛いよ、辛いよ………。
一人は、嫌だよ………。
助けてよ……………澪…。
“澪”。
無意識に、口にしていた。
どこの誰かも、顔や姿さえもわからない、“澪”という存在。
でも、今だけは、私に確かな安心感を与えてくれた。
それだけで、十分だった。
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