107:猫宮[saga]
2012/11/18(日) 18:17:40.05 ID:k9KWVTOk0
「来ないで……!
もう傍に……、ひっく、来ないでったら……!
貴方を見ていると辛いの!
貴方を見てると、自分で自分が嫌になるの!
だから……、だ……から、もう……!」
汚い言葉が止まらない。
卑怯で弱くて、今の現実から逃げ出したい私の感情が止まらない。
自分自身で弱い自分を更に弱くしちゃってる気がしてくる。
でも、私は思った。
そんな弱くて情けないのが本当の私だったんだって。
見ないようにしてたけど、見たくなかったけど、それが本当の私。
憂ちゃんに手助けしてもらう価値も無い。
『一生に一度のチャンス』に選ばれる価値なんて最初から無い。
そんな最低な私が本当の私だったんだ……。
憂ちゃんは……。
憂ちゃんは私の言葉に何も返さなかった。
それもそうだと思う。
憂ちゃんはきっと私がどうして泣いているのか、見当も付いてないだろう。
当然だよね……。
ギターのチューニングをして、それを私に見せたら急に泣き出されてしまったんだから。
こんなの憂ちゃんじゃなくたって、他の誰だって訳が分からない。
私だって、自分が同じ事をされてしまったら、戸惑う事しか出来ないと思う。
憂ちゃんはそんな訳の分からない理由で、私に泣かれて、責められてしまってるんだ。
私に愛想が尽きてしまっても仕方無いし、それが普通の反応だと思う。
いつもそうだ。
私は色んな事から逃げて逃げて、逃げ回って、
その結果、最終的に当たり前みたいに色んな物を失ってしまうんだ……。
それが私って人間なんだ……。
なのに……。
私は左肩に感じてしまっていた。
人の手のひらの温かさを。
憂ちゃんの手のひらの温かさを。
憂ちゃんが置いたんだ、私の左肩に自分の手のひらを。
こんな私に、自分の想いを伝えるために。
「梓ちゃん……。
私、余計な事しちゃったみたいだね……。
ごめんね……、梓ちゃんの気持ちに気付いてあげられなくて……」
憂ちゃんが悲しそうな声色で私にそう囁く。
私は涙を拭いながら、顔を上げて憂ちゃんの顔に視線を向ける。
それでやっと、悲しそうなのは声色だけじゃなくて、表情もだったんだって気付けた。
まだ涙でぼやけていたけれど、その悲しそうな憂ちゃんの顔だけははっきりと見えた。
私が憂ちゃんにそんな顔をさせちゃってるんだ……。
優しい笑顔が印象的で、いつも微笑んでくれていた憂ちゃんを私が……。
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