過去ログ - 梓「サナララ」
1- 20
12:猫宮[saga]
2012/07/07(土) 17:57:18.29 ID:THTp/il80
「はい。お姉ちゃんの同級生の方達です。
とっても楽しくていい方達なんですよ」


その言葉に嘘は無かったと思う。
でも、微苦笑を浮かべながらも、その寂しそうな瞳が変わらなかったのが気になった。
あの人達が本当に『とっても楽しくていい方達』なら、
どうして平沢さんはこんなに寂しそうにしてるんだろう……?


「そうなんですか……。
私待ってるから、声を掛けて来てもいいですよ」


「ううん、いいんです。
今は……、声を掛けられませんから……」


「今……は……?」


「そんな事より」


平沢さんが私の隣に腰を下ろして、急に笑顔になった。
もうその表情から寂しさは感じられなかった。
『今は』という言葉の意味が気になったけど、
初対面の相手に食い下がって深い所まで訊ねるのも失礼な気がしたから、私は口を閉じた。
平沢さんは笑顔のまま、優しい声になって続ける。


「もう夕暮れですし、お時間を取らせるのも申し訳ないので、すぐ説明しちゃいますね。
あ、でも、それより先に……、
失礼ですけど、貴方のお名前をお訊ねしていいですか?」


言われて初めて気付いた。
そう言えば、私はまだ名前を名乗ってなかった。
平沢さんの名前を教えてもらっておきながら、これは失礼な事をしてしまったみたいだ。
私は軽く頭を下げてから、小さく口を開いた。


「ごめんなさい、平沢さんには名前を教えてもらってたのに……。
私は中野梓って言います。
よろしくお願いします、平沢さん」


初対面の相手に名前を名乗るなんて不用心だったかもしれない。
だけど、私は何の抵抗も無く、平沢さんに自分の名前を名乗っていた。
大好きってわけじゃないけど、決して嫌いじゃない私の名前。
この世界に生まれて以来、ずっと付き合って来た私の名前を。
何故かこの初対面の平沢さんに知ってほしい気分だったんだと思う。

平沢さんが笑顔のままで頷いてから続ける。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
259Res/446.18 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice