過去ログ - 梓「サナララ」
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2:猫宮[saga]
2012/07/05(木) 18:25:34.52 ID:ffqtBWew0
「でも……なあ……」


分かってるはずなのに、私は苦々しく呟く事をやめられない。
もしかしたら、何も分かってないのは私の方なのかもしれない、って考えが私の脳裏を過ぎる。
あの子はこれからの自分の事を考えてる。私の事もきっと考えてくれてる。
だから、言いにくかったはずなのに、自分から切り出してくれたんだと思う。
これから勉強に集中しようって。
自分達の将来について真剣に考えようって。
それを分かりたくない私の方こそ、ずっとずっと子供なのかもしれない……。
何だか自嘲気味に笑いまで漏れて来た。
何もおかしくなんてないのに。

ただ一つ言えるのは、あの子は善意で行動してくれたんだって事。
私を傷付けるつもりも裏切るつもりも無かったんだって事。
それだけは私にも分かってる。
だからこそ、裏切られた、今のままで居たい、
って感じてしまってるのは、単なる私の我儘なんだろうと思うし、きっと現実にもそうだ。
あの子の善意を受け取れられなかった私の方が、恐らくは子供なんだ……。


『地獄への道は善意で舗装されている』


またその言葉が私の頭の中に浮かんで来る。
善意が、辛い。
善意をそのままに受け取れなくて、苦しい。
世界は悪意に包まれてるってよく聞くけど、もしかしたら違うのかもしれない。
本当はほとんどの人が善意から行動しているのに、
周囲に居る人達を幸福にしようと努力しているのに、
その行動が結果的に地獄に繋がってるだけなのかもしれない。
この言葉通りに。
私は最近、そういう事ばかり考えてる。


「……それはそうと」


私はこれまでと違った意味で嘆息しながら、周囲を見回してみる。
平日の夕暮れの公園。
防犯のためか、TVゲームで遊んでいるからなのか、
子供達の姿はほとんど見えなかったけど、それは別に珍しい光景じゃない。
自分が日焼けしやすい体質だって事もあって、
私も子供の頃は外よりも家の中で遊ぶ事の方が多かった。
単に公園の古い遊具で遊ぶ子供達が減って来たってだけなんだろう。

何故か私と同い年くらいのカチューシャをしたショートヘアの人が、
友達らしい長い黒髪の人を連れて、楽譜を見ながらドラムのスティックを振り回していたりしたけど。
位置的に丁度いいのか、ブランコの外柵をリズム良く叩いたりもして……。
まあ……、何をするのも、人それぞれって事だよね……。

楽譜……か……。
部活で音楽をやってる人達なんだろうか。
こんな夕暮れにも練習してるって事は部活帰りなのかもしれない。
いいなあ……。
羨望の気持ちが私の胸に湧き上がる。
私だって音楽がしたい。またあの子とセッションしたい。
自分の部屋で一人でギターを弾くのは寂しいよ……。
弾きたく……ないよ……。


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