過去ログ - 梓「サナララ」
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26:猫宮[saga]
2012/08/02(木) 18:55:39.46 ID:SOU6xWSH0
そこで平沢さんが口ごもった。
まだ出会って間もない平沢さんだけど、珍しいな、って私は思った。
平沢さんは素直でまっすぐで真剣な子だって、私は勝手に思ってる。
ちょっと話しただけだけど、それは凄く感じるんだ。
だからこそ、口ごもった平沢さんの様子を私は見逃せなかった。

平沢さんはもう少しだけ言葉を止めてから、
少しだけ悲しみがこもったような笑顔を私に向けた。


「あ、それより、梓ちゃん。
今日、どうしてこの公園に来たか憶えてる?
この公園に来た理由……、憶えてる?」


「理由……?
えっと、それは……」


平沢さんに続いて口ごもるのは私の番だった。
それは平沢さんと出会う前から疑問に思っていた事だ。
思い出せない。
と言うか、この公園に来た理由に心当たりが無いんだよね。
お金も持ってないし、アウトドア派というわけでもないし……。
本当にどうして私はこの公園に来たんだろう……?

私が少し声を上げて唸り始めると、
平沢さんがとても簡単な答えを私に伝えてくれた。


「それもね、『チャンスシステム』のルールなんだ。
『一生に一度のチャンス』に選ばれた『対象者』の人は、
特に何の理由も無く『ナビゲーター』の居る場所に引き寄せられるらしいの。
私もね、前の『ナビゲーター』の人と会った時はそうだったんだよ。
何故か急にプールに行きたくなっちゃって、
一人で近所の市民プールに行っちゃってたんだ。
一人でプールに行く事なんて、今まで一度も無かったのにね……。

それでね、そのプールに前の『ナビゲーター』の人が居たんだよ。
『ナビゲーター』の人に引き寄せられるって話を聞いた後、
私が「どうしてプールで私を待ってたんですか?」って訊ねたら、
前の『ナビゲーター』の人は嬉しそうに言ってたなあ……。
「『対象者』が可愛い子だったら、
その子の可愛い水着姿が見れるかもしれないじゃない!」って……」


なるほどなあ……。
分かってしまえば単純な理由だ。
私が公園に来た理由は、真の意味で平沢さんと巡り合うためだったんだ。
何だか自分の心を操られてるみたいでちょっと怖いけど、
それは今平沢さんの姿を確認出来ない律さんと澪さんも同じ状況だった。

『チャンスシステム』がどんなシステムなのか完全に分かったわけじゃない。
でも、私には何となく分かっていた。
お願いを一つだけ叶えられる……、その許容範囲はかなり広そうだって。
人の心を軽くでも操作出来るくらいに……。
少しだけ……、それが怖いって思わなくもない。

ただ、怖いのは『チャンスシステム』の事もだったけど、
私はそれ以上に得体の知れない何かへの怖さを感じてもいた。
ちょっとだけ深呼吸をしてから、私は平沢さんにそれを訊ねてみる。


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