51:猫宮[saga]
2012/09/14(金) 18:01:59.46 ID:m+KlO7h40
▽
「練習、始まらないね……」
私はちょっと呆れながら、平沢さんと顔を合わせて呟いた。
平沢さんはそれには何も答えずに苦笑して、軽く首を傾げるだけだった。
確かに平沢さんの立場としては、どうにも反応しにくいだろうけどね……。
部室。
とは言っても、私の部室でも平沢さんの部室でもない部室。
私達は長椅子に腰を下ろして、昨日顔を知ったばかりの人達の部室に来ていた。
私達が座る長椅子の先、音楽室には不似合いな机が並べて固められている。
そこでは三人の女子高生が紅茶を飲んで談笑していた。
カチューシャをしたショートヘアの律さん。
流れる黒髪が綺麗で美人の澪さん。
それともう一人、こんな所に居るのが不自然にしか思えない柔らかい金髪の人が居た。
金髪の人は紬さんと言う名前で、この部のキーボードを担当しているらしい。
ちなみに昨日見た通り、律さんはドラマー、澪さんはベーシストなんだそうだ。
それは全部、私の隣で苦笑している平沢さんが教えてくれた事だった。
そう。ここは桜が丘女子高等学校の軽音部部室。
私が平沢さんに無理に頼んで連れて来てもらった場所だった。
昨日、律さん達が公園でバンドの練習をしているのを見て、私、思ったんだよね。
ひょっとしたら、律さん達は学校で軽音楽部かジャズ部にでも入ってるんじゃないかって。
平沢さんに訊ねてみたら、私の想像は正しかったみたいで、
律さん達は平沢さんのお姉さんと同じ、桜が丘女子高等学校の軽音楽部に所属していると教えてくれた。
それが分かった途端、私は律さん達の姿をどうしても見たくなった。
一つ年上らしいけど、同じ年頃の女の子達がどんな音楽活動をしてるのかを。
それも何の飾りも無い本当の意味での生の姿を。
それが私の夢と『一生に一度のお願い』にとって大切な事だと思ったんだ。
その意味で、私は幸運だったんだろう。
今の私は、神様の勘違いか、適当なシステムの弊害か、
とにかくそんな偶然で、平沢さんと同じく『石ころ帽子』を被ったみたいな状態になってしまった。
誰にも気にされないし、誰にも気付かれない妙な状態に。
困った状態では勿論あるけど、これは使えるかもしれないって私は気付いた。
この状態なら誰にも気付かれないし、誰にも迷惑を掛けずに目的を果たす事が出来るもんね。
律さん達の軽音楽部の生の活動が、この目で見る事が出来るんだもん。
いい加減な神様だけど、その辺だけは感謝してもいいかもしれない。
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