60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県)
2012/09/16(日) 18:36:53.02 ID:ZGlmnJ7h0
こののんびりした空気の原因の一つとしては、
もしかすると部員の全員が同級生なのも関係してるんだろうか。
憂ちゃんがさっき教えてくれたんだけど、この軽音楽部の部員は全員一年生らしい。
何でも先輩が一人も居なくて廃部寸前の部を、律さんが一年生の部員を集めて立て直したんだとか。
ちょっと資質を疑ったりもしたけど、そんな事が出来た律さんは素直に凄いと思う。
一応、私もこの桜高を受験して入学するつもりではあるけど、
もしも桜高に音楽系の部が無かったとして、その時に自分で部を設立出来る自信は私には無い。
そこまで積極的なタイプじゃないし、部活動にそこまで情熱が持てるかも分からない。
私が音楽をやりたいのはあの子となんだし、あの子と音楽を続けたいだけだし、
だから、あの子とまた音楽が出来れば、それが部活って形じゃなくても構わないって思う。
そのためにも早くこの受験シーズンが終わってほしいんだけどな……。
「私も律さん達の演奏を聴くの初めてなんだ」
憂ちゃんがちょっと目を輝かせて私の耳元で囁いた。
律さん達には聞こえないのに、つい声を小さくしてしまうのが気配りの出来る憂ちゃんらしい。
目を輝かせているのは、大好きなお姉さんの仲間の演奏を心から楽しみにしているからだろう。
お姉さんを大好きだという事は、お姉さんの仲間の事も信じてるって意味でもあるんだ……。
だって、大好きなお姉さんが選んだ仲間なんだもんね……。
私は少しだけ憂ちゃんに気付かれないように微笑んで、
いつの間にか楽器の準備を終えていた律さん達の方に視線を向けた。
まだのんびりした空気は漂っていたけど、私の目には三人とも楽しそうに見えた。
緊張した面持ちの澪さんですら、律さんや紬さんと目を合わせると少し落ち着けたみたい。
実力は未知数だけど、少なくとも信頼関係のある仲間達なんだと思う。
「んじゃ、本番近いからいきなり合わせていくぞー!
ワン・ツー!」
頭上でドラムのスティックでリズムを取りながら、律さんが宣言する。
澪さんと紬さんが軽く頷いてから、演奏を始める。
ベース、キーボード、ドラムの音が重なり、旋律が奏でられる。
重なっていく律さんと澪さんと紬さんの音楽。
難しい曲じゃない、と最初は思った。
ギタリストらしい憂ちゃんのお姉さんが居ないから、詳しい事は言えない。
それでも、そんなには難しい曲じゃないのはすぐに分かった。
律さん達三人はともかくとして、
憂ちゃんのお姉さんは高校生になってから初めてギターに触れた初心者なんだそうだ。
初心者を含むセッションじゃ、そんなに難しい曲にするわけにもいかないだろう。
あくまで学園祭で発表される、ありきたりなレベルのオリジナル曲だ。
律さん達の演奏にしたってそうだ。
まだそんなに上手くはない。
私の周囲の同級生よりは上だけど、良くも悪くも高校一年生の演奏だった。
正直に言わせてもらうと、年下の私の方が上手に演奏出来る。
私は小学生の頃からずっと練習して来た身だから、それくらいの自負はしてもいいと思う。
律さん達の演奏より、私の演奏の方が上手い。
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