過去ログ - 梓「サナララ」
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72:猫宮[saga]
2012/09/23(日) 17:49:37.09 ID:+GTu1/9c0
「……あっ」


不意に私の頭の中に考えてはいけない望みが浮かび上がった。
昨日からずっと頭の中を過ぎっては目を逸らしていた、私のお願い。
私の……、『一生に一度のお願い』……。
とても単純で分かりやすい私のお願い……。


『私をギター演奏の天才にして下さい』


あんまり無茶なお願いはスルーされるらしいけれど、
このくらいなら誰かに迷惑を掛けるわけでもないし、
『石ころ帽子』なんて異常な状況を作り出せる神様なら、とても簡単なお願いだろう。
このお願いが叶えば、私の悩みなんて完全に消え去るはずだ。
自分の無力に思い悩む事も無いし、プロになる夢だってきっと叶えられる。
誰も損をしない、とても真っ当なお願いだと思う。
だから、私はこれを『一生に一度のお願い』にしたっていいんだ。


「でも……、でも……」


自分の無力を感じてた時以上に、私の身体は震え始めていた。
確かにそのお願いをしたなら、私の悩みは全部消え去ってしまうと思う。
何もかも乗り越える事が出来ると思う。
だけど、そんな事をして、私は満足なんだろうか?
自分の努力でなく、他力本願で夢を叶えて、満足出来るんだろうか?
一人だけ不正をして、私は本当に両手を上げて素直に喜べるの……?

しかも。
憂ちゃんの説明が本当なら、願いが叶った後、私は全てを忘れてしまうんだ。
つまり、私は自分のギターの腕前が唐突に上がった理由も分からず、
恐らくはそれを嬉しく思って、悩む事も無く音楽の道を進んでいく事になるんだと思う。
自分がどうしようもない不正をした事にすら気付かないままに……。
そんなの……。
そんなのって……、無いよ……。
滑稽で哀れ過ぎるよ、そんなのって……。


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