過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.13
1- 20
171: ◆YHxtVKAHbw[sage saga]
2012/08/01(水) 08:12:29.25 ID:BR3oCDRdo
「──なんて事が先日あってな」

 放課後のゲー研の部室で俺は黒猫に話していた。
 ここには現在俺と黒猫しかいない。
 他の連中は掃除当番か日直か何かで遅れているんだろう。

「はぁ……」

 これは黒猫の溜息だ。

「呆れてものも言えないわ。兄妹の惚気話を聞かされなきゃいけない理由なんて私には何の心当たりも無いわよ?」
「な、なにが惚気だ? 桐乃の思い付きに振り回された俺の不幸な話のつもりだぞ?」
「不幸の割には顔がにやけているわ」

 え? にやけてる?
 そんなつもりは全く無いのだが。

「で、あなたの妹の小説ってこれかしら?」

 言いながら部室のデスクトップのディスプレイの角度を変えて俺に見せる。
『けーたいi倶楽部』のPC用ページ(このサイトは携帯からの操作に特化しているが当然ながらPCからでもホームページの閲覧や編集が出来る)だ。

「えっとどれどれ? あれ? 作者名が『理乃』じゃなく『きりりん』ってなってるぞ?」

『妹空』も元々は他の名前で書いていたが、例の盗作騒ぎでフェイトさんが勝手に名乗った『理乃』の名前でいくことになったのは御存知の通りである。

「あの小説が無駄に評判になったから『理乃』という名前も一つのブランドになってしまった事をあなたの妹は不本意に思っているみたいよ」

 なるほど。
『理乃』で小説を発表したら、あの『妹空』の作者だ、という目で見られるぶん一定のページビューは稼げるだろうが、その代償として正当な評価をされない恐れがある。

「んで、タイトルが『えー毎度』? ふざけてんのか? それにどこにも『妹』なんて入ってないぞ?」

 桐乃らしくないな。

「ふざけたタイトルというのは同意するけど……先輩、どこに目を付けているの? 『江戸』に『妹』という字を挟んで『江妹戸』、そこから転じてこのようなタイトルにしただけってすぐ分かるでしょう?」

 すぐにその回答を導き出せるお前こそ信じられないぞ。

「でも『理乃』でないのに露骨に『妹』という字を使うと、良くてペンネームを変えただけ、下手をしたら『理乃』の二番煎じと思われるでしょうね。これで一般読者の目は誤魔化せるわ。でも身内のあなたが分からないなんて本当に救いようのない莫迦だわ」

 悪かったな。

「まあ、このまえのアレも一応取材だったという事だな」
「そう。そして東京スカイツリーも」
「いやいや、あれだけは本当に無意味だったぞ?」

 黒猫はブラウザで別ページを開く。

 表示されたのは浮世絵のようだった。

「スカイツリー建設は江戸時代に予言されていたという説があるの。ここを見て頂戴」

 その浮世絵の黒猫が指し示す部分を見ると、当時の技術的には有り得ないであろう高さの塔が描かれていた。

「この絵は幕末に描かれたもの。あなたの妹の小説は元禄だから時代は違うけど、位置的には現在のスカイツリーとほぼ同じ場所に描かれているわ」
「う、嘘だろ……?」
「そう、嘘よ」

 なっ……!?

「予言なんてのは嘘。でもこの絵が江戸時代に描かれた事は真実。位置的な部分はただの偶然ね。当時は江戸城よりも高い建物は御法度だったからその鬱憤を晴らすために描かれた、ただの櫓よ」

 ふう。脅かしやがる。

「でも、この高さの櫓が江戸時代に本当にあった、という設定であなたの妹の小説は書かれているわ。相変わらず有り得ない展開だらけで文章も稚拙だけど『妹空』よりも私的には楽しめたわ。悔しいけど本当に面白かったわ」

 黒猫がここまで言うからにはよっぽどの事だろう。

「もちろん、江戸城を見下ろすような櫓は恐れ多い、御法度だという設定はちゃんと生かされていて、取り壊しをしようとする幕府側とそれに対抗するレジスタンスという対立の図式がストーリーの基本となっているようね」

 そこから江戸城攻撃シーンに繋がる訳か。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/800.47 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice