過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.13
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262: ◆YHxtVKAHbw[sage saga]
2012/08/06(月) 18:52:41.36 ID:DufMtpvzo
 他の親父のセリフは……

『ああ。わざわざ自分から悪影響を受けに行くこともあるまい』

 悪影響って何のことだっけ?

『やぁだー、そういうのって確かオタクっていうんでしょ?』

 このお袋のセリフか!?

 ここから考えられる桐乃の化粧品以上に俺に触れられたくないもの……。

 依然として桐乃が俺に取りすがってるので、少し腰を引いて腹のあたりに空間を作り、服の中に隠したままだったブツを取り出した。

「これ……おまえの物だったのか……?」

 DVDケースを桐乃に見せる。

「え……? うん。さっきもそう言わなかった?」

 いつ言ったっけ? そんな記憶は全然ない。
 ていうか、自分のものではないと否定している姿しか記憶に無いぞ?

 まあいい。どこかに思い違いがあったのだろう。
 このあたりは後で頭の中を整理したらいい(その結果、恥ずかしさと気まずさに身悶える事になるとは、この時には想像してなかったのだが、それはまた別のお話)。

 ようするに、俺の予想が間違いでないとしたら、桐乃は──

 オタクだ。

 親父とお袋は食事の時の言葉から分かるようにオタクにいい印象は持っていない。
 かく言う俺もそういう人達に対して、得体の知れないもの、と思っているフシがある。

 オタクに偏見持っている人に自分がオタクだとバレるのは出来れば避けたいだろう。
 俺だって眼鏡属性があることなんて他人には知られたくないからな。

 ──あ、そういう事か。
 どんな趣味であれ、それを嗜好していない人から見たら理解できないものなんだ。
 例えば、俺のツレにサッカーバカがいるけど、そいつと野球部のクラスメートの会話って、まったく噛み合ってなかったもんな。

 つまり俺は、理解できないというだけの理由でオタクに偏見持っていたって事……なんだろうな。

「じゃあこれ返すよ。この事は俺の胸にしまっておく。くれぐれも親父やお袋にはバレないように気を付けろよ?」

 出来るだけ兄貴っぽく言いながらDVDケースを桐乃に差し出す。
 桐乃は両手で受け取ると、また俺の顔を見上げて、

「妹がこんなのが好きって失望しない? おにいちゃんをやめちゃったりとかしない?」

 なんでそんなに心配そうな目をするんだよ。

「さっきも言ったろ? 俺はいつまでもおまえの兄貴だし、おまえはいつまでも俺の妹だ」

 桐乃は満足そうに微笑んで頷いた。

「そうだ、桐乃。もう遅いし俺もコンビニに行かないといけないから今日はいいんだけど、今度時間があったらちょっといろいろ話聞かせてもらっていいか?」
「え? 別にいいけど、なに?」
「人生相談って言ったらいいのかな? 俺の見聞を広めるためにおまえの趣味がどういうものなのか知りたいんだけど……ダメか?」

 桐乃はぶんぶんと顔を振った。

「ダメなんかじゃない! いいよ! あたしの全て見せてあげる!」

 おいおい桐乃よ、その言い方は誤解を招くぞ?

 桐乃は俺と話が出来なくて寂しいと言っていた。
 そう言われて俺も気付いたんだろう。“寂しかった”と。
 さっきは偉そうに、いつまでも兄妹だ、なんて言ったけど、実際この数年は兄妹の関係とは程遠いものだった。

 もしかすると、久し振りに兄妹に戻れるかも知れない。
 そう思うと、その機会をくれた、ピンクというありえない色の目と髪をしたDVDケースのイラストもなぜか愛らしく感じる。

「その女の子、可愛いな」

 桐乃の手に戻ったケースを指差しながら言うと、

「うん!」

 と、それはもう嬉しそうに答える桐乃だった。


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