過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.13
1- 20
270: ◆YHxtVKAHbw[sage saga]
2012/08/06(月) 18:56:23.51 ID:DufMtpvzo
 ここで俺は、ふと思いついた疑問を口にした。

「おまえ、何年ぶりか知らねぇけど俺と話出来るようになるまで、どんな気分で過ごしてた?」
「え? 昨日も言ったでしょ? 寂しかったって」
「いや、俺との兄妹関係じゃなくて……。今の中学生はこういう──オタクみたいなのが当たり前なのか? って」

 俺が中学の頃は、オタクという人種は周りから浮いた状態だったので、時代は変わったのかな? と思ったのだ。

「ううん。たぶんあたしの勝手な想像だけど、オタクを一番毛嫌いしてるのは女子中学生だと思う……」
「じゃあ、おまえ、ひょっとして友達とかいないんじゃないか?」

 桐乃は大きく首を横に振って否定した。

「そんなことない! 友達はたくさんいるよ!?」
「そっか。良かった。俺の思い過ごしだったか」

 桐乃は首を微妙な角度で傾げる。
 その視線に促されるように俺は言葉を続ける。

「いやな、もしかして学校でも寂しい思いしてたんじゃないかって。家でも寂しくって学校でも寂しかったらちょっといたたまれない気持ちっていうのかな?」

 気にしすぎだって。なに心配してるの? という言葉を期待したが、桐乃は予想に反して眉間に皺を寄せた。
 目には涙さえ浮かべている。

「……かった……」
「え?」
「寂しかった……。さっきも言ったように、あたしの友達はオタクを嫌ってるから……。だからこの趣味隠さないといけなくって……。学校の友達と一緒にいるのが楽しくないわけじゃないけど……でも……自分の趣味を気兼ねなく話せる友達だって……ほんとは欲しかった……」

 俺の思い過ごし……ではなかった。
 やはりこいつは心の奥では一人ぼっちだったんだな。

「わかった。じゃあ、俺はおまえの兄貴だけど、そっちの趣味の友達にもなってやろうか?」
「え? それは……ダメだよ……。おにいちゃん、オタクじゃないもん……」

 桐乃が言うには、友達というからにはお互い教えあったりして共に向上して行く間柄でないといけないとのことらしい。
 今の俺だと教わるばかりだし、桐乃の趣味の全てを知った後でも、オタクに理解がある一般人のままで、オタクになるとは限らないとの事だ。
 確かに桐乃の趣味に偏見は持たないようにしようとは思うが、俺がオタクになるかどうかは別の次元だしな。

「でも、寂しいんだろ?」
「いいの。おにいちゃんが昔のように話相手になってくれて、あたしの趣味を知っても気にしないで接してくれるだけで」

 本当にそれだけでいいんだろうか。
 これでこいつの寂しさを癒すことが出来るのだろうか。

 今の桐乃は左右の重さが全然違う天秤のような状態だ。
 万一俺がオタクになったとしても、それだけでは桐乃の心の天秤は釣り合う事はないだろう。
 いや、そもそも俺は桐乃の天秤の「学校の友達」の反対側にいるべき人間ではない。
 俺の役割は兄貴としての妹の支え、つまり天秤そのものだ。
「学校の友達」と対になる「趣味の友達」がこいつには必要だろう。

 しかし、そうなると天秤である俺としては桐乃の趣味だけでなく、学校の友達と桐乃の共通の話題というものも理解する必要があるわけか。

 でも、妹の交友関係を根掘り葉掘り聞くのもいやらしいし、とりあえず当面の懸案事項、趣味の友達をどうするか、だな。


「おにいちゃん? さっきから黙って、なに考えてるの?」
「──おまえの事」
「え?」

 桐乃はとたんにゆでだこのように真っ赤になって、両手を頬に当てていた。

「や、やだ……」

 たぶん、盛大な勘違いが発生しているだろう。

 しかし、俺はあえて勘違いを解消するのはやめておいた。
 恥ずかしがる仕草をする桐乃が──正直に言おう、めちゃくちゃ可愛かったからだ。

<了>


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/800.47 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice