過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.13
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366:或る兄妹の別れ 3/10  ◆ebJORrWVuo[sage saga]
2012/08/18(土) 00:03:04.68 ID:w9Y/glPqP
 桐乃と仲良くなれた、と思ってたのは俺だけじゃなかった。
 
「あ……。う、うっさい。い、今のは言葉の綾ってか、なんか、そういうのなの!」

 全然分からねえよ。
 
「あー、とにかく! あたしは納得いってない!
 けどあんたは粛々と受け入れてる、それがあたしは気に食わないワケ!」
 
 と言われてもなあ……。
 
「おまえだって分かってんだろ。この家で、決定事項は確定事項なんだよ。それを覆す事は不可能だって」
「嘘。だって、だってあんた……」

 桐乃は、少し語尾を弱めながら、続ける。
 
「あんた……、あたしのコレクションを守ってくれたじゃん」
「…………」
「あれ、決定事項だったでしょ。あたしの趣味を捨てるって、お父さん言ったんでしょ?」
「…………」
「でもあんたが、それを守った。自分を犠牲にして。そして趣味さえ容認させてくれた」
「……たまたまだっての。親父の機嫌が良かったんだろーよ」

 あの時の事を思い返し、俺は顔を背けて言う。
 今でもあの時の俺は可笑しかったと思う。
 
 ……それでも。俺はあの時の判断を間違えてたとは思わねーけどな。
 
「じゃあ、今回も機嫌良くしてあげればさ……」
「……いや、そうそう上手くは行かねえだろ」
「やってみないと分からなくない?」
「いや、前と今回は違うだろ。当事者が反論しても、こういうのは上手く行かねえよ」

 前回は、俺は第三者だったからこそ、説得出来たんだと思う。
 今回、俺が説得してもそれはただの言い訳にしかならないんじゃないだろうか。
 何より……、今回、俺にそこまでの熱い情熱は無い。
 
「あんたが……」
「…………?」
「あんたが、あそこで受け入れなければ、次はあたしが、って思ってた」
「おまえが……?」

 おまえが、親父に立ち向かったって言うのか?
 やめとけ、俺はおまえを親父殺しにさせる訳には行かねえ。
 いきなり灰皿で殴りかかろうとする奴に任せる訳には行かねえだろ。
 まあ、でも?

「気持ちはありがとうな。だが、それはしなくていい」
「なんで?」
「なんでって……。そうだな、俺が兄で、おまえが妹だから、とか?」

 兄が妹を守るのは当然なんだよ。
 それが先に生まれた者の後に生まれた者に対する宿命みたいなもんだ。
 
「なんかやだ」
「……何がだよ」
「その、兄だから、とか。妹だから、とか」
「いや、だって俺は兄で、おまえは妹じゃん」

 というか、妹ゲー好きの台詞とは思えない事言い出しやがったな。
 兄妹の力を否定ッスか。
 
「ねえ、京介?」
「んだよ」
「なんで、あたしがあんたを京介って呼ぶようになったか分かる?」

 ……理由、あったのか。
 というか、いつからだっけ?
 
 気付いたらそういう風に呼び方が変わっていた。
 お袋辺りは「ねえ」とか「あんた」から「京介」になったと言ってたが正確に言うと違う。
 今でもねえ、って言うしあんたとも言い続けている。
 変わったのは、「兄貴」から「京介」にだ。
 
「……兄貴として、失格になったから?」

 その理由を思いついて、背筋が寒くなった。
 気付いた。どのタイミングから、桐乃が俺を京介と呼ぶようになったのか。
 それは、俺が……兄が妹を頼った時。
 黒猫の相談を持ちかけた時だ……。


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