過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.13
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596: ◆6U1bthnhy6[sage saga]
2012/09/01(土) 23:05:19.49 ID:FEwJ2EfDO
「『シスコン・ダラー・ベイビーズ』って知ってるか?」
「え!?それってあの前評判メチャ高かったけど、会社が不渡りして出なかったっていうあの伝説の・・・!?」

思いもかけないレアタイトルの出現に、あたしは我知らず大きな声を上げていた。

「しーっ!声がでかい!」「す、すいません!・・・でもあれって発売されなかったでしょ?」

そうなのだ。
エロゲ業界の少数性。
所詮ゲームの中心に居座れないジャンルなだけに、その出版元は常に倒産の危機に晒されている。
先のシスコン・ダラー・ベイビーズも、そういった経緯で発売されなかった幻の名作の一つだ。

「それがな、会社を解雇されたスタッフ達が、このまま埋もれさすのは勿体ねーってんで、自分たちで作ったんだ。限定50枚」

ニヤリッと笑って部長さんが顔を寄せてくる。
あたしはごくりと喉を鳴らすと、まさかと思いつつ捨てられない思いを言葉に乗せる。

「・・・ま、まさかそれ・・・持ってるんですか?」
あたしの言葉にコクリと頷く部長さん

「たまたまスタッフに知り合いがいてな、そのよしみで譲ってもらったんだ」
「!?・・・聞いたことない・・・」
「ああ。ネットなんかに流出するとよ、正直高騰は間違いねえし、下手すりゃ追っかけてくる危険性もある。だから持ち主がわかるようにシリアルナンバー付きで作った代物だ。その上信用のおける奴だけに配った。だから秘匿性は折り紙つきだ。逆にあんたが知ってたらそっちのが問題だぜ」

肩を竦めて言う部長さん。でも正直あたしはそれどころではなかった。

「・・・い、いいなあ・・・」

そう。
羨ましすぎて呆けていたのだ。
涎も出てたかもしれない。ほ・・・ほんとにいいなあ・・・。

「・・・いるか?」 
「えっ!?」

あたしは一瞬にしてトリップから我に返った。
いいいいいい今なんて?

「ああああああのあの・・・」
「ん?いらねーか?」

部長さんの傾げた首に、あたしは思い切り掴みかかった。

「いっ!いるいるいるいるっ!ほしいほしいほしいほしいっ!!」
「おおう!スゲー喰いつきだなっ!?」

あたしにガクガクと揺さぶられながら、それでも部長さんは笑っていた。

「オーケーオーケー。高坂に持たせるから楽しみにしてな」
「は、はい」

それから数分、あたしは何度目かの非礼をわびた後、改めてレアソフトの貰い受けを確約されていた。

「で・・・でもいいんですか?」
「ん?なにがだ?」
「だ、代金とか・・・その・・・秘匿性とか・・・」

そうなのだ。
このソフトは聞く限り、かなりのセキュリティを要する。
しかも個人個人の意識でだ。
それなのに会ったばかりのあたしに譲るなんて・・・。
その上、正直かなり高価なはずで・・・。

「気にすんな」
「・・・え?」
「もしバレたら俺の見込み違いだ。あんたに迷惑は掛からねーよ」
「え、え?でも・・・」
「それに俺がやりたくてやったんだ。あんたは素直に受け取ってくれりゃいいのさ」
「・・・お金は?」
「おいおい。大切な女を金で売るほど、俺は無粋じゃねーぜ?」
「『大切な女』・・・ですか?」
「ああ」

そう言って笑う部長さんを、あたしは笑顔で返すしかできなかった。

「大切にします・・・」
「おう!」

ニッと笑いながら親指を立てた部長さんに、あたしは同じように親指を立てて答えたのだった。

END


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