15: ◆0WipXNi8qk[saga]
2012/07/15(日) 23:33:36.18 ID:arZspdAto
***
理事長の部屋は、なんていうか、やはり凄かった。
カーペットやソファーのフカフカ具合なんかは半端ないし、ベッドも天蓋付きという俺も初めて見るようなものだった。
そんな部屋の中央で、俺は対面に居る理事長にワインを注いでもらっている。
どうしてこうなった。
「あ、ありがとうございます」
「ふん、どうせ君も隼人やアイリさんと同じくざるなのだろう?」
「ま、まぁ……」
学園の理事長の前で未成年飲酒を認めるのはアレな気がするが、そもそもその理事長本人が酒を進めてくるので素直に白状する。
酒はよく父さんに付き合わされ、自分が結構飲めるというのも分かっている。
「若い頃は勤勉で真面目な学生だった私を、こうやって酒に付き合わせたのは隼人だ。だから、君も付き合いなさい」
なんだかムチャクチャな事を言われている気がするが、反論しても仕方ないので苦笑いを浮かべるしかない。
その間に、理事長は自分のグラスのワインを一気に飲み干す。
「ワインはキリストの血。例え未成年でもバチは当たるまい」
キリスト万能だな。
いつまでも口にしないのも失礼なので、俺も一口飲んでみる。
「あ、おいしい」
「だろう? なにせ高いからな」
キリストの血にも高いのと安いのがあるんだな。
たぶん動脈の綺麗な血は高くて静脈の汚い血は安いのだろう、などと意味の分からない事を考える。
俺は理事長の真似をして、次は一気に飲み干す。
「いい呑みっぷりだ。どんどん呑みなさい」
「あはは、それどう考えても教育者のセリフじゃないですって」
理事長も楽しげに小さく笑うと、再び一口で飲み干す。
俺もこうして大人と二人で飲んでいると、父さんのことを思い出す。
グラスの中のワインを少し回しながら、俺はしみじみと口を開く。
「でも、たぶん父さんは、こういうワインの違いとか分からないと思いますよ。アルコールが入っていればいいって人なので」
「ワインはきりしゅとのち!!!」
「……はい?」
驚いて顔を上げると。
そこには顔を真っ赤にして明らかに完成してしまった理事長がいた。
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