9:μ[saga]
2012/07/19(木) 19:35:04.72 ID:Jwj4hYrL0
「別にちょっと笑って終わりだと思うよ?
りっちゃんくらいは少しからかって来るかもしれないけど、
りっちゃんってばああ見えて皆の事を考えてくれてる部長だから大丈夫だよー」
「そうね……、律はその程度の反応で終わるかもしれないわ。
でも、私が一番問題視してるのは澪なのよ。
あの子は危険ね。危険な香りが芳ばしいくらいに漂っているのよ……」
「澪ちゃんが?
でもでも、澪ちゃんって面倒見のいい思いやりのある子だし……」
「ええ、それは分かっているわ。
澪は思いやりがあって、皆の事を考えてるいい子よ。
それは二年で同じクラスになった私もよく分かってるわよ。
でもね、それが逆に怖いのよ。
ハワイ旅行は私の勘違いだったと話せば、澪も最初は笑って納得するでしょうね。
だけど、あの子はきっとその後に色んな事に考えを巡らせるはずなの。
妄想癖って程でもないけれど、あの子は何事も深読みする性質があるから。
それできっと一つの答えに辿り着くわ。
『和は本当はハワイに行きたくて悶々として、つい嘘を吐いてしまったんじゃないか』って。
辿り着くわ。ええ、きっとそうよ。
あの子ならきっとその答えを導き出すのよ……。
その日から私は澪に可哀想な子を見る目で見られ続けるんだわ……」
「か、考え過ぎだよ、和ちゃん……」
「最悪の事態は常に想定しておかなければならないのよ、唯……。
でも、澪にそう思われるくらいなら、私だってそんなに気にしないわ。
問題は澪と同じ様に考える誰かが出てくるかもしれないって事なの。
澪ならいいわ。
澪なら勘違いとは言え、私の相談に乗ろうともしてくれるかもしれない。
勘違いとは言え、それは私としても嬉しい事よ。
勘違いとは言え、ね。
でもね……、澪と同じ答えに辿り着いたからと言っても、
澪と同じ対応をしてくれる人達ばかりじゃないのよ、唯。
ハワイに行きたかった私がつい嘘を吐いてしまった。
その答えに辿り着いた誰かの中の一人に、
私を見栄っ張りだと思う誰かが出て来ない可能性はゼロではないの。
私を見栄っ張りだと思ったその誰かはきっと誰かに話し始めるわ。
「桜高の生徒会に所属している二年の真鍋和という生徒は見栄っ張りだ」って。
その噂はきっと音の速さどころか光の速さで町中に知れ渡る事になるのよ……。
そうなったら私の未来が……、私の将来が……!」
「だ、大丈夫だって……。
もしそんな噂が広がったとしても、すぐに忘れられちゃうってば……」
これだけ話しても、私の幼馴染みは事態の深刻さを全く理解していないようだった。
まったく……、本当に仕方の無い幼馴染みよね……。
でも、平和ボケと呼ばれて久しい現代っ子では、それが限界なのかもしれない。
自分の身に危機が迫らない事には、
現在そこに忍び寄る危険に気付く事も出来ないのはある意味当然でしょうね。
私は小さく嘆息した後、唯の両肩を掴んで顔を唯の顔の傍に寄せた。
これは私だけの問題じゃないって事を、唯にも自覚してもらわないといけないのだ。
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