過去ログ - テッラ「困りましたねー」フィアンマ「言う程困ってもいないだろう」
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11: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2012/07/22(日) 04:26:31.01 ID:Wo68V/rd0

駒が進み、盤上の戦況は刻々と変化していく。
三回連続で負け、いつも通りかと項垂れるテッラの様子を眺め、フィアンマはチェス盤その他諸々を定位置にしまったかと思うと、んー、と暇そうな声を出した。
勝つ事が分かっていても、圧倒的に勝利するというのは愉快ではあるものの、面白みが足りない。

フィアンマ「テッラ、雨を止ませろ」

テッラ「無茶振りですねー」

フィアンマ「中よりは外の方がまだ退屈が紛れるというものだ」

テッラ「それはそうかもしれませんが…」

フィアンマ「何とかして止ませろ」

そんな無茶な我侭を言うフィアンマの口元は愉しそうに歪んでいる。
無理難題を他人に振って、その反応を楽しんでいる顔だ。
悪趣味な、と思いつつも、テッラは反抗するでもなく、うーん、と悩んだ。
結局、いくら魔術でも雨を止ませる事など出来ないため、一般的な―――そう、お祈りをした。
斬新な手法でなかったことがつまらなかったのか、フィアンマは堪え切れなかった欠伸を小さく漏らす。
残念ながら、祈りは届く事は無く。雨脚が多少弱まっただけで、外に出るのには億劫な天気だ。
フィアンマは退屈だと言い残し、『奥』から出ると、大聖堂の中でも静かに祈る為の部屋へと消えた。
テッラは残念そうに肩を落とし、着いて行くでもなく、大聖堂の中を歩いて時間を潰した。

フィアンマは一人椅子に座り、ぼんやりとした表情でしばらく何も無い場所を見つめた後、目を閉じる。
祈るべきことは沢山ある。祈って救われるとは限らないが。
懺悔すべきことは何も無い。しいていえば、この間とある魔術師の『処分』許可書類を教皇にサインするよう命令した事位だ。
しかし、フィアンマが祈る事はといえば、一つしかない。

フィアンマ(早く神の御許へ逝かせてください)

即ち、自らの死。
何者からも取り残され、やがて期待をしないようになった彼が望むのは、永遠の眠りのみ。
だが、そう願えば願う程、何故だか死からは遠ざかる。
特別な力、それを具現化した右手。それらは幸運を引き寄せる。
死に損なって何百年。昔の事はもう思い出せない程、長い人生。
祈りを捧げているフィアンマはいつもと違い、弱い面が前面に出ている。
か弱い、とでも表現すれば良いのか、今にも突き崩されそうな、普段と真逆な雰囲気を纏い、フィアンマは静かに祈る。
ついでに、アックアの黙祷も忘れない。もっと前代の左方のテッラや、前方のヴェントも。教会で神父時代に育てていた子供達も。
長い髪を垂らし、黙々と祈る姿は、愛に満ちた聖女のようにも、苦悩する男性のようにも見える。



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