過去ログ - テッラ「困りましたねー」フィアンマ「言う程困ってもいないだろう」
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42: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2012/08/01(水) 18:02:44.19 ID:VBHLjLDR0

よく晴れている、翌日午後。
右方のフィアンマは、聖ピエトロ大聖堂『奥』、且つ自らの私室にある簡素なベッドの上で目を覚ました。
昨日は色々と考えていたせいで明け方まで中々寝付けなかった為だ。
『神の右席』は有事の際にしか基本的に動かない。
故に、ローマ正教最大の頭脳にして最大の力を持つとはいえど、フィアンマは忙しいということがほとんどない。
フィアンマにとって、やるべきこととやることはイコールだ。
彼自体は空虚な人間の為、特別何か事を起こしたいという強い欲求はない。
不意に沸き起こる自殺願望や、それに基づく強い衝動にも耐え、ただ空白の時間を過ごしている。

フィアンマはしばらくぼんやりとした後、ひとまず、暇潰しをしようと考え、外に出た。
そして、マフィアよりもよほど慣れた様子で、裏路地へと消える。
『幸運』なことに、そこには弱った様子の子猫が居た。
フィアンマはほんの少しだけ迷った後猫に近寄り、しゃがみ、周囲の石を積み上げて猫を囲んだ後、右手を翳して何事かを呟く。
自らに宿る『力』を応用した即興の回復術式。
『神の如き者』を『座』に着かせ、その力でもって被術者を癒す。
本来人間に施すべき術式ではあるが、フィアンマは人助けをする気力はない。
元気になった子猫はみゃあ、と鳴き声を漏らし、フィアンマの手の甲へと頭をこすりつけて甘えた。

フィアンマ「…親は、居ないのか」

みー、と猫は応える。
フィアンマは子猫の頭を撫で、のろのろと立ち上がる。
そして足元に擦り寄って甘える子猫を蹴らないよう気をつけつつ、表通りへ出て行った。
ただ、誤算としては、猫がついてきてしまったことである。

フィアンマがゆっくりと歩く度に、とことこと着いてくる。
歩くのが遅いなりに、それでも懸命についてくる。
ふと気になったフィアンマが後ろを振り返ると、猫がお座りした状態で彼を見上げていた。
自分と同じ、オレンジがかった金色の瞳。

フィアンマ「…仕方が、ないな」

このままでは、車に轢かれる。それではあまりにも可哀想だ。
そんな気まぐれの中の気まぐれ、同情心でもって、フィアンマは猫をそっと抱き上げた。
悪気のない子猫はフィアンマの襟元にすりついて甘える。

フィアンマ「……、…数ヶ月だけ、だからな」

うにゃあ、と。
仔猫は、機嫌良さそうに鳴いた。


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